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京町家友の会

※「京の菓子暦」は、平成14年(〜15年)の取材記事です。
  十二月に入って、カレンダーをめくる時、「ああ、今年もこれが最後の一枚やなあ。何でこんな早いこと日ぃが経つにゃろ?。」と思い、あれもせんなん、これもせんなん、と今年中にやらなあかんことが、いっぱいあることに改めて気が付きます。お坊さんも走る「師走」やさかい、凡人の私らが走り回るのは当然やろけど、そんな忙しい合間に、ちょっと一息、甘いもんをいただいたら、疲れも吹っ飛んで、もうひと頑張りしょう!と思えるのです。
 和菓子は京都人の毎日の暮らしに密接に結びつき、生活と心を豊かにしてくれています。毎月のお菓子を紹介しながら、その奥にある京都の知恵と文化を探れたらと思います。


◆初冬の生菓子
 生菓子は、季節ごとに素材や風味、色や形、そして命名にも工夫を凝らしてあります。
冬至につきものの「柚子」、赤い実が可愛い「万両」、雁の焼印「初雁」、そば皮にお茶の葉を散らした「茶通」。


柚子

万両

初雁

茶通

 きんとんは、その色と組み合わせで名前が変わります。真っ白な「雪餅」、晩秋から冬の京都の山を模した「奥山」、ふんわりと優しく積もった「初雪」。


雪餅

奥山

初雪


こなし生地

聖夜
 ※「こなし生地」と呼ばれるのは、白餡と餅粉、そして色粉を混ぜたもので、飾りものに使います。赤、黄、緑の三原色のこなし生地を使えば、その混ぜる割合次第で、何色でも作れます。たとえば、「雪餅」と命名したきんとんの上に、黄色と緑を同量ずつ混ぜたこなし生地を小さく丸めたものと、赤いこなし生地を同じく小さく丸めたものを飾れば、これで「聖夜」と名付けられます。十二月のクリスマスだけのお菓子です。


◆許しもん

平安神宮銘菓
 神社などに限定して納めるお菓子を「許しもん」といいます。「平安神宮銘菓」として平安神宮でのみ販売されている「許しもん」は、毎年「立冬」の日に「右近の橘の摘み取り」で収穫した橘の実を使ったお菓子です。橘は、ミカンの一種で酸味と苦味があり、寒さが厳しくなる季節に「不老長寿の妙薬」として重宝されてきたといいます。平安神宮から届けられた橘は、皮としぼり汁を練ってゼリー状にしたものを麩種(ふだね)で挟んであります。今冬に収穫した新橘入りのものは、お正月から販売されるそうです。


おぜんざい
◆おぜんざい(お善哉)
 「おぜんざい」といっても、関西では「つぶあん」を用いたものを、関東では「こしあん」を用いた、関西でいうところの「お汁粉」のことを言うようです。


(左)十勝大納言、(右)丹波大納言
 「善き哉(よきかな)」という字が当ててあるように、もともとは、小豆そのものにお目出たい祝い事や厄除けの意味があったと思われます。お赤飯や小豆粥のように、小豆を入れるだけで目出たさを表していることがわかります。小豆は、最も大粒のものを「大納言」と呼んでいます。有名なところでは、「十勝(北海道)大納言」や「丹波大納言」がありますが、現在、京都・亀岡の北、馬地(うまぢ)で獲れるものが最高とされています。小豆の粒が大きな俵型をしていて、色つや良く、風味もよく、煮くずれしにくいと言われています。

 「おぜんざい」は、その材料が非常にシンプルで、材料の良し悪しが「おぜんざい」の味を決めるといっても過言ではありません。お砂糖は、より精製されたものを使うほど、小豆の風味が生きるようです。お砂糖の種類としては、上白糖、ざら目(白ざら・黄ざら)、氷砂糖、和三盆などがありますが、氷砂糖を小さく砕いたものを使うのが一番アクがなく、煮溶けやすく、あと口も良いようです。和三盆は、独特のクセのある風味が「おぜんざい」の味を濃くし、甘くなり過ぎるように思います。


上白糖

ざら目

砕いた氷砂糖

和三盆

 ※お餅も晴れの日に使うもので、焼いたお餅を「おぜんざい」に入れることで、より一層風味が生きるようです。

 ※上等の塩昆布を小皿にのせて添えるのも、「おぜんざい」の決まりごとです。口直しの意味と、「おぜんざい」の甘味をより美味しく感じるための知恵なのですね。

協力:大極殿本舗・六角店「栖園」 京都市中京区六角通高倉東入る南側

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