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京町家再生研究会

第5回全国町家再生交流会を終えて

京極迪宏(再生研理事)
 第5回全国町家再生交流会がこの11月16日(土)、17日(日)、大分県臼杵市の「サーラ・デうすき」を主会場に開催され、京町家ネットから12名が参加した。まずは、2日間に亘り暖かいおもてなしをいただいた地元実行委員会の皆さんにお礼を申し上げたい。
 全国町家再生交流会は、第1回が2005年(平成17)6月に京都市で、第2回が2007年(平成19)12月に再び京都市で、第3回が2009年(平成21)10月に石川県金沢市で、第4回が2011年(平成23)10月に、重要伝統的建造物群保存地区である奈良県橿原市今井町で開催された。
 「町家の再生・活性化による新たなまちづくりを」がテーマの第1回の案内状には、冒頭以下の趣旨が記されている。

 〈「京町家」が注目され、ブームを巻き起こしていますが、職住一体の伝統的な都市住宅である京町家が、単なる商業目的で飲食や物販店舗に利用されているのが実体です。しかし一方、ストックを活かした都市再生が注目され、町家の再生・活性化を軸に、地域独自の歴史と文化を掘り起こして再創造する、新たなまちづくりが各地で展開されています。
 そこで、私たちは、町家保全・再生・活性化に関する全国協議の場をもつことにしました。─〉

 第1回が開催されてから8年半が経過し、この間、町家再生活動を取り巻く社会情勢は人口減少とマイナス成長を基盤に大きく変化し、ストックを重視したまちづくりが行政施策の根幹をなすようになって来た。とは言え、大都市においては我々が目指す方向とは裏腹に、都市住宅としての町家再生が主流になれず、飲食・物販への商業転用が勢いを緩めることはない。そして、大型町家の再生利活用の道は依然として険しく、相変わらず除却後のマンション化、ホテル化の波は止まらない。また、地方都市中心市街地の「空き町家」問題は深刻さを増しているが、これらの利活用も頼りにならない観光客相手の飲食・物販が主流をなしている。
 この交流会は、大都市である京都市(人口150万人)、地方中核都市である金沢市(同50万人)、ベッドタウンであり、重伝建地区を持つ地方都市の橿原市(同12万人)、地方小都市である臼杵市(同4万人)と、それぞれ特長ある地域における町家再生のあり方を検討、協議してきた。そこには共通する課題もあれば、まったく質の異なる問題もあり、一層きめ細やかな対応が必要になっている。
 残念なことであるが、臼杵市での交流会において次回を立候補する団体がなく、開催地を決めることはできなかった。これについて京町家ネット構成員の中に、@新たな候補地を早急に探す、A原点に戻って三度京都で開催する、B検討する対象やそれに対する対応策に関してあまりにも地域間格差があるのでひとまず休会とする、という三通りの意見がある。
 今後交流会をどうするかを考えるにあたってこの際、これまでどのような問題が協議されてきたかを正確にトレースしておくことが必要であろう。そのため、各交流会で取り上げられた「分科会のテーマ」を分類、整理して、何が町家再生のキーワードになるかを検討し、今後の方向を探っていただきたい。

□分科会のテーマ□  *( )内は開催回
継 承 町家継承のあり方(1)
町家の住まい手と担い手を取り巻く環境づくり(2)
町家住まい手に対してどのようにアプローチすべきか(3)
空き町家所有者にどのようにアプローチすべきか(3)
町家住まいを希望している人は何を必要としているか(3)
住まい手・所有者・担い手、まちづくりの三方よしを考える(4)
再生し住まい続ける町家の暮らし----住み手、庭(5)
法律・制度 活性化の具体的事例と制度活用(1)
法・制度と町家(2)
景観法は町家を活かせるか(4)
町家をめぐる法制度の現状と課題(5)
技術・職人 町家の構造特性と改修作法(1)
職人の養成と技術の継承(1)
技術と町家(2)
技術者の能力を活かした町家修復・再生とは(3)
「町家」リフォーム・新築市場の開拓拡大について(4)
伝統工法・職工のこれから(5)
流 通 町家流通のしくみ(1)
町家の利活用と流通(2)
不動産業者との連携のあり方について(3)
町家再生の不動産活用方策を探る(4)
町家の流通と空き家対策(5)
利活用 町家活用から大和の地域再生へ(4)
町家の利活用とそのマネージメントの実際(5)
その他 市民活動団体ネットワークと官・民パートナーシップ(1)
町家再生・活性化と金融システム(1)
イベントによる町家への意識変革(2)

 以上の6項目について、「技術・職人」に関しては、検討・協議を作事組全国協議会に委ねることが出来る(来年、第4回会合が宮津市で開催)。流通については、「作全協」同様の「全国町家情報センター」の設立に期待し、それに任せたいところであるが、都市間格差が非常に大きく、全国組織創設の前途は真に厳しいものがある。
 交流会の今後の課題は、行政主導による町家再生施策に的確に対処出来る市民活動団体をどう養成するかと、商業転用に偏った無定見な再生利活用に歯止めをかけ、正しいあり方を提案し、どのように進めるかである。

詳しい内容についてはコチラでもご覧いただけます。
2014.1.1