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はじめに京町家再生研究会京町家作事組京町家友の会京町家情報センター

 京都都心の伝統的町家『京町家』は、近年、取り壊しや建て替えによって急速にその数を減らし、かつての落ち着いた美しい町並みは混乱し、職・住・遊の均整のとれた環境を著しく悪化させてしまいました。しかし、町衆の暮らしや職人技術を育んできた京町家が今も町のあちこちでひっそりと、そしてしっかり息づいています。また、季節の移ろい、自然との関わりの深い町家の暮らしを大切にし、町家が残るコミュニテイーに住み続けたいと考えている多くの住民がいます。我々は、歴史的、伝統的な町家を市民共有の資産として、今後の京都のまちづくりの中に継承していく責務があるといえます。

 しかし、伝統的町家の継承といっても、町家を昔のままただ保存していくだけでは、現在の多様な生活条件、社会状況に対応できない面があります。まず、ここに暮らす人々に対して住まい易さ、安全性などが確保されなければなりません。また、本来、職住共存の場であった町家の経済基盤として、新しい活用の方法を考えることも必要です。長年に亘って、京町家の中に蓄積されてきた暮らしと建物の様々な知恵や工夫を再評価し、それを現代に生かす形で町家を継承していくことが必要です。これが京町家の再生です。

 京町家再生研究会は、平成4年の発足以来活動を積み重ねて10年が経過し、平成14年11月にNPO法人の認証を受けました。設立当初に比べ、最近は町家がさまざまな形で話題になることも多く喜ばしいことではありますが、単なる町家ブームのような感じもします。この状況が一過性に終わらないように、今こそ地道に歴史的建築としての京町家を保存再生していかなければなりません。本来、町家が持っている暮らしや建築技術の伝統を理解し、それを引き継いで活かしながら、かつ、新しい感性にも対応していくという持続性のある展開が必要です。このことは、開発中心の20世紀という時代に対する反省として、今、世の中全般に問われていることでもあります。

 このような考え方を京都のまちづくりのアイデンティティーとして広く共有し、京町家の保存再生に積極的に取り組んでいくことが必要です。そのために、平成11年に改修工事の実践組織「京町家作事組」、12年に京町家を愛する人の親睦団体「京町家友の会」を立ち上げました。そして14年4月には、京町家の持主と購入・賃貸希望者を流通情報で結ぶ「京町家情報センター」を作り、新たな展開を図っています。この4つの市民組織が密接に連携をとりながら、ネットワークによる活動を進めています。
 我々が取り組むべき課題は多岐にわたり、ますます複雑な様相を呈しています。また、マンションブームに見られるような開発至上志向が衰えを見せず、京町家破壊のスピードはむしろ加速されています。もはや時間的余裕はありません。皆様と共に力を合わせ、京町家の保全・再生に取り組んでいきたいと思います。
特定非営利活動法人 京町家再生研究会
理事長 大 谷 孝 彦