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京町家友の会


町家の日関連プログラム実施報告「島崎先生に聞く、北欧家具で楽しむ京町家」
丹羽結花(京町家友の会)

  あけびわ路地で町家暮らしを実践されている島崎先生にお話を伺いました。参加人数があっという間に定員を超えてしまい、2グループに分けて、まず、お話の前に島崎先生のすてきな暮らしを拝見させていただきました。あけびわ路地には一棟5軒ともう1軒の町家が並んでおり、いずれもシンプルな住まいに居住者の思いが詰まっています。ちょっと違う外観、それ以上に個性豊かな暮らしが内側には広がっています。そのひとつである島崎先生のお宅におじゃまして、今回の「試み」で紹介しているような島崎先生のこだわりなど、じっくりとお話をうかがうことができました。

 見学会終了後、路地にあるもう1軒のK邸二階のお座敷で、みんなでそろって島崎先生のお話を伺いました。このK邸も、あけびわ路地の一棟の改装後、大家さんが思いきって改修に至った、シンプルな町家です。春の兆しが感じられるやわらかな風と光を感じながら、島崎先生のゆったりした語りに耳を傾けました。

 町家での暮らしがそろそろ2年になり、その間にいろいろ考えさせられたことをもとにして、暮らしを考えた町家内部の再生が必要であるという提言をいただきました。なによりも畳の暮らしにあった新しい家具を工夫したい、という気持ちがひしひしと伝わってきます。

 一つは、畳を傷つけず、アイレベルを保てるような高さの椅子など、京都の町家にふさわしいものを工夫していくことが必要であるということ。もう一つはキッチンやお風呂など、設備面でももっと工夫ができるというが重点的に語られました。長屋の寸法にはあまり余裕がなく、ワンルームマンション用の設備が割と安価でぴったりとおさまります。でも、オーダーで工夫すれば、もっと町家にふさわしいデザイン、使いやすいもの、そして工夫次第で低価格のものが可能だというのです。それらを検討していきたい職人さんも各地におられるとのことです。安価な大量生産の背景には、それらを効率よく造り、生産し、そして流通するなど、実はコストがかかっています。地域でオーダーメイドでも実はお安くできる、という話にちょっとびっくりしたものの、落ち着いて考えてみれば町家そのものも同じ仕組みです。畳の大きさが基準となり、通り庭の幅で調整するという、すぐれたシステムのもと、簡単に設計できる建物なのです。しかも地域の個性、ちょっとした施主のこだわりも盛り込めます。地域の大工、職人さんが作り上げるという意味で、町家も「オーダーメイド」で簡単に作れることを思えば、内装も同じですね。しかも家具には施主のこだわりを存分に発揮することができます。建物とバランスのよい中身も地域で一緒に作っていけるというわけです。

 京都では昔こうだったからそのまま復活するというのではなく、今の生活にあうものをつくっていく、考えていくことが必要、という島崎先生のメッセージ、丁寧に背景を説明してくださったので、わかりやすく、参加者の皆様の心にも残ったことでしょう。ともすれば「今の生活にあう」現代的な設備をどのように導入するのか、バランスよくいれるのか、ということに議論が進みがちですが、町家にあうものを自分たちの手で新たに作っていく、という新たな展開へとつながる機会となりました。木工、地域の特産など、地域の職人さんの丁寧な仕事を経て、暮らしやすい家具や設備の寸法、材料、加工などを工夫していこう、という機運が盛り上がりました。

 再生研では、木造建築研究所を立ち上げて、いろいろな企画をしていきたいと考えていたところです。そこで、今回の島崎先生の2つの提案、「まちやくらしの会」とメンテナンスする職人さんがすぐそばにいてくれるような「お直し横町」構想などを盛り込み、2018年度の取り組みとして推進していきたいと思っています。最後は小島理事長のみんなでやっていきましょう、という力強い宣言でお開きとなりました。

◆実施概要
2018年3月10日(土)
13:30〜14:00 見学会  あけびわ路地 島崎邸
14:15〜15:30 お話し会 あけびわ路地 K邸
参加者 名
これまでのあけびわ路地再生に関する記事は以下をご参照ください。
◆試み 空き家が生き返るとき 下京の長屋 改修現場見学会 京町家通信 105号
◆試み 回り路地の町家 京町家通信 107号
◆改修の事例 「あけびわ路地」の5軒長屋を再生する 京町家通信 108号
◆京町家に移り住んで あけびわ路地ウォーリン・ドゥルーケント邸 京町家通信 111号
◆試み 長屋を住まいとして再生する大家さんの思い 京町家通信 113号
◆改修の事例 「あけびわ路地」6軒目の改修 京町家通信 116号
◆京町家に移り住んで M邸 京町家通信 117号


(2018.5.1)
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