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京町家友の会



1月の本願寺
矢尾定 佐々木定寿 (京町家友の会)


1月4日のお鏡開き(お茶所)

 平成25年4月から、西本願寺北隣にある西本願寺門法(もんぼう)会館地下で、全国からお参りに来られるご門徒さんに食事を提供しています。西本願寺関係者は、西本願寺と言わず、本願寺と言います。(正式には、浄土真宗本願寺派龍谷山本願寺。)全国に多くの祇園祭があるのに、京都祇園祭と言わないのと同じことでしょう。本願寺は、大変特殊な所で12月20日に、おにぎり600人分と、豚汁を作ります。その日は、お煤払い。堀川通りから見える大きな屋根の建物、御影堂、阿弥陀堂の大掃除は500年前から続いている行事です。
 
 次の行事は、1月4日お鏡開き、千人分のぜんざい接待です。年配の方が多いので餅は使わず、しらたま入りのぜんざいです。朝10時に本願寺を堀川通りから入り、御影堂前のお茶所という場所に行けば、どなた様でも接待が受けられます。1月、次の大きな行事は、御正忌報恩講法要です。毎年1月9日から、親鸞聖人のご命日である16日まで営まれます。仏教では「食事(じきじ)」と呼ばれる、午前10時から正午までの間に食事をする習わしがあり、このときに出る精進料理を「斎(とき)」と言います。本願寺では、毎年1月10日から15日まで、お斎を国宝書院の鴻の間で、お一人につき一万円以上の御懇志に対するお扱いとなります。この料理は、堀川高辻にある矢尾治さんが作られています。数年前から全席椅子での食事になりました。浄土真宗では、第八代蓮如上人の頃、自らが育てた野菜や穀物を持ち寄って、お念仏をよろこぶお同行がお寺での聴聞の間に調理し、一品一品こころのこもった料理を分かち合い、箸をすすめたのがお斎の始まりと伝えられています。今日のお斎も蓮如上人の時代からの野菜と汁物のみの調理の伝統にならい、胡麻豆腐・五種の煮しめ・おひたし・お和えと揚げふの盛り合わせ・香の物・味噌仕立ての汁物による一汁五菜(いちじゅうござい)を基本とし、それぞれ朱塗りの飯椀(めしわん)・汁椀(しるわん)・椿皿(つばきざら)・二の椀(にのわん)・茶津(ちゃづ)・留津(るつ)に盛りつけます。またご飯は、全国のご門徒さんよりお供えされた仏飯米を炊いています。

本願寺のお斎献立(本膳仕様)
<茶津>胡麻豆腐、山葵醤油
<汁椀>かぶら、豆腐、白味噌仕立て
<留津>からし和え、六条ふ
<二の椀>かぶ、ふき、ゆば
<椿皿>沢庵、紫漬
<飯椀>自的
<折り詰め>笹巻まんじゅう、はなふ、れんこん、しいたけ、高野豆腐、かぶの酢漬け、金時豆、ひろうす

 高価な食材を使うのではなく、旬の野菜やありふれた乾物を使います。私たちのいのちを支えてくれているのは、魚や肉だけではなく、地中に精一杯根を張って生きている植物を、無駄なく使い切ることが大切です。私たちの生活スタイルは、ものがあふれ、食べものをお金を出せば簡単に手に入れることができます。お斎を通じて、現代人のぜいたくな食事を、見つめなおすきっかけになればいいと思います。
 
 最後に、京町家通信をお読みの皆様には、是非本願寺の書院、飛雲閣を見に行って頂きたいのです。普段は、非公開ですが、御正忌報恩講法要期間、そして3月7日から5月31日の第25代専如門主伝灯奉告法要期間、見せて頂けない日もありますので、本願寺参拝教化部へ確認の電話をされてから行かれることをお勧めします。
(075)371-5181番
(2017.1.1)
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