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京町家友の会


七五三

春の京折詰 佐々木 定寿(「矢尾定」社長 京町家友の会会員)
 京折詰、春のテーマは「お花見」です。
 昔から日本人は、四季の移ろいの中で生きてきました。春、夏、秋、冬、季節とともに生活が成り立ち、自然に感謝し、その時季のものを食べてきました。季節を食べる、つまり、春には「春を食べる」ということです。
 花咲く桜の木の下でもうせんを敷き、京折詰をひろげて一献。桜の花びらがひらひらと舞いおりてくる。京折詰のふたをあけて、「わぁーきれいやなぁ」「ほぅ見事やねぇ」「春らしい献立や」「京都らしい折詰やなぁ」。どうしたらお客様にそう思っていただけるか、楽しんでいただけるか、そればっかり考えて献立を作り、調理をし、盛り付けていく。そのためには、いつもいつもおいしい定番メニューで作りたいと思っています。目新しい物、演出の派手なものは、お客様が望んでおられるようには思いませんし、したくありません。おいしい定番メニューは、先人に対する感謝であったり、京都の自慢であったりします。昔からあって、今なお食べ継がれているもん、今までどこかで食べたような気がする、なつかしい味やなぁ、それがおいしさであり、食の一番大切な安心感、それが基にないとあかん。
「守」・「破」・「離」
「守」は、もともとある料理。「破」は、それに料理人の創意工夫をいれたもの。「離」は、そんな事から離れた料理。
「破」や「離」の料理であっても、まるで昔からあったかのように作らなあかん。なんやら、わけのわからんようなもんは、だれも食べとうないのとちがいますやろか。

 春の花見用京折詰の献立は、出し巻、かまぼこ、さわらの西京焼、笹巻ふまんじゅう、ゆば巻、桜ふ、筍の木の芽和え、空豆、桜餅、花見団子、なんかを入れましょうか。ごはんは、ちらし寿司。きんし、えび、しいたけ、れんこん、菜の花をのせて色合いがきれいで春らしい。最後にじゃがいもをスライスして桜のはなびらの形にぬき、桜色に染めたものと木の芽を盛り付けて出来上がり。


仁和寺山門
  さぁ、どこへ行って食べましょうか。おすすめスポット一番目は、御室仁和寺。ここの桜は高さ3m足らずの低木で、根元から枝が張り出す八重の御室桜。木が低いので目の高さの花を間近で見られます。京福電車北野線「御室」でおりると、正面に仁和寺の山門が見えます。

嵐山の山桜
 二番目は嵐山渡月橋上流大堰川。屋形船にのって、船上で旅行気分のお花見。川沿いに咲く染井吉野の艶やかさ、そしてふと背景に目をやれば渡月橋の向こうの山桜が霞のように淡いピンクに色付いているのが見えます。京福嵐山駅、JR嵯峨嵐山駅、阪急嵐山駅でおりて川沿いに上流へ歩き渡月橋をこえて嵐山「吉兆」前から船にのります。今年は地下鉄東西線が太秦天神川まで延伸しましたから、新駅の「京福天神川」で乗り換えて、御室・嵐山方面がおすすめです。
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〈春の花見用京折詰 献立の説明〉
出し巻:京料理では手前から巻くのが基本。卵焼と違いダシが多いので柔らかく焼きにくいのですが、多少ゆがんでも巻きすで巻いて形を整えることができます。卵3個に、だし汁90cc、薄口しょう油大さじ1/2。これで4人分できます。

蒲鉾:スケソウダラ、はも、たい、グチなどの白身魚を主な原料とし、臭みのないモミ、シラベなどの木を板にします。新鮮な魚を手に入れたいという素朴な欲求が若狭の一塩ものを生み、加工食品の蒲鉾を定着させました。

さわらの西京焼:京都の甘い白味噌を西京味噌といいます。さわらは両面に塩をふり、切り身なら15分位おいて水けをふき取り、西京味噌に味醂を混ぜ合わせた味噌を両面に塗ってバットに並べ、ラップをかけて冷蔵庫で一晩以上漬け込みます。味噌を手ぬぐいでていねいに取って強火の遠火で焼きます。仕上げにハケで味醂を塗って出来上がり。焼いてから多少時間が経っても身がほっこりしているので折詰にぴったりです。

桜餅:京都の桜餅に使われるのは「道明寺」または「道明寺粉」で、もち米を一度蒸して乾燥させて粗く砕いたもの。

ちらし寿司:お寿司屋のちらし寿司は生もんが主役で、料理屋のちらし寿司には生もんが全く入りません。懐石では「かぶる」ことを嫌い、向付でお造りを出しますから、生もんは使わないのです。折詰は調理して数時間経ってから、お客様が食べられるので、生ものは入れません。
(2008.3.1)
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