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京町家友の会



京町家の飛び火(富費とびひ) 黒竹 節人

 私が京町家の再生に取り組んだのが、平成元年「百足屋」がきっかけです。それから16年が経ちました。しかし、京町家を取り組む以前に「アトリエRYO」の木下先生と、民家の再生や古い建物の調査解体に同行していたのが30年前くらいのことです。当時から私は再生論を唱え、文化財の生きた伝承を目指し、実践してきました。京都では現在、調査によると、約600近い町家レストランやギャラリー、エステ等、町家再生事業に取り組む人たちが急増しています。それぞれ個性を生かした発想のもと、改修されよみがえった町家。その改修レベルも様々です。しかし、町家に取り組む方々の基本的思考には共通的な思いが多々見られます。こうした現象における方向性に京都の魅力、観光化における経済効果、また旧町並みの整備が集客につながり、改修費の回収と経済効果としての町家(ハード)サービス(ソフト)が多様化していく中に、新しい京文化が創生されていくことと思われます。
 現況の町家再生における店舗利用方法においては、様々な意見、異論がありますが、価値の共有できる部分を見つけ出し、修正を加えながら、歴史都市としての思い入れを残しながら、また、再利用しながら、新時代に継承できる町づくり(整備事業)と豊かな経済力を作り、京文化の伝承に役立つ方向性を示唆することが重要かと思います。
 「京町家の魅力とはなんですか?」とよく交わされる言葉ですが、共通して言われているのが、落ち着く、安らぐ、古いものがこんなに変った驚き、価値がないと思っていたのに、素晴らしい価値評価をされた……。

 こうした思いは京都市民だけではなく、観光に来られている、他県の京都ファンの方々の意見でもあります。「来て良かった」この一言を言わしめる京都にしたいですね。最近では、東京に京町家風レストランの出店が増えています。高層ビルの耐火構造で、無機質のビルの中に木造町家風も、なかなか評判がいいようです。私の友人たちも東京進出を実践しています。他県でも京都らしいよさを楽しみたいという思いと贅沢にも両面お持ちのようです。こうした思考がまた、京都への集客にもつながる一面かな?とも思われます。
 最近、私が手掛けた店舗に「京町家かふぇ 豆助」というのがあり、大阪高槻市で、7階建てマンションの1、2階100坪を利用して京町家を作って欲しいとの依頼でした。外観はタイル貼りのマンションビルですが、そこに町家の建物(外観)を再現するということです。要するに看板建築です。
 半世紀前は木造町家にファサードだけ洋館に見えるように看板建築が施され、京都市内のみならず、各地に広がりました。近代化を目指した時代です。今回の、現代ビルに古い町家を再現するということは、50年前の逆の発想が求められているということではないでしょうか? そこには、消費者達は、ビルで覆い尽くされた町並みに安らぎと懐かしさを心のよりどころと思われているようです。この店を経営されているK社長は大阪でも70〜80店舗程の居酒屋を手掛けてこられた方です。このK社長のソフトも素晴らしく、大繁盛の店になっています。京都まで出掛けられない方たちに、これも京ブランドのサービスのひとつかもしれません。
 また、アイルランドで不動産経営をしている外国人が新門前に土地を購入し、町家を新築して欲しいと依頼があり、1階は店舗、2、3階は住宅として昨年夏に完成しました。
 新しい取り組みで多くの方たちの創造力を持って各地に歴史的文化の活性化が飛火していくことが、世界に向けての日本文化の創生につながるのではないでしょうか?
(京町家友の会会員)
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