残ったカレーの具はカレー炒飯にして使い切り、ルーには牛乳と卵を足してスープを。肉じゃがの残りは卵で巻いてオムレツに。少しずつ残ってしもた肉や魚介類は、あり合わせの野菜とパテ風にまとめて焼けば、まるで焼売(シュウマイ)。揚げればかき揚げの出来上がり。鯛の煮物は切り身より「アラ」の方がほんまは美味しいし、残った煮汁の煮こごりも棄て難く、これで炊いた屑野菜入りのおからは常備菜として重宝。常備菜といえば、上等のお茶殻はほかさんと冷凍庫で貯めて、ちりめんじゃこと一緒に煎り煮したらカテキン豊富な佃煮一丁上がり。それでもまだ少しずつ残ってしもたおかずは、人数分に少しずつ切り分け、クラッカーの上にのせるも良し、大皿に彩りよく盛り付けるも良し、お猪口などの小鉢に取り分けてトッピングで飾って味に変化をつけるも良し、最後に冷蔵庫はすっきりして良し。この残菜皿デーは、主婦にとってはめでたしめでたしの日。しり取りゲーム一巻の終わり―献立一例の話です。
路地もんの苺やトマト、胡瓜が出始める頃になると、朝早ように加茂のおばさんが葉付大根や莢豆やらも一緒に車に積んで売りに来はります。おだいは白いとこより青々と立派な葉のほうが食べでがあるみたいと、葉飯や葉と茎のお漬けもんにし、皮もきんぴらにして、白い先のしっぽの辛いとこはおろしてチューブ入りの山葵で色付けしたら、ほんまの山葵おろしが出来た! 大根一本捨てるとこなし。 このように、お金も労力も時間も節約した、ケチでずぼらな工夫は、京の町家暮らしでは昔からどこの家でも大なり小なり当たり前に、つつましく、ひっそりとやって参りましたものを、今回NHKでは「出るゴミは少なく、食費は一ヶ月一万円節約出来る、始末で豊かな京のお番菜」と、えらい格上げして放映していただき、気づつない結果となった次第です。 おまけにこの献立のお番菜を雑誌でも紹介したいということで、このたび意匠会議の友人と一緒に東京のスタジオまで、二十品ほど作りに行って参りました。 「こんな献立のレシピくらいで、経費使こてもうて、何や悪おすなあ」「世の中えらい変わりましたなあ」。このたびもまた気づつない思いをしながら、そして今の世相を案じながら、けれど、こんな細やかな始末心でも町家暮らしのなかから発信できたのは大変うれしいことでもありました。たとえ僅かな人数でも次世代の人たちが現在の物心共に多忙で無駄の多いゴミだらけの生活を見直してくれはるきっかけになればと、今までの戸惑いが少し前向きの気持ちに変わりました。 町家暮らしのなかには、こうして見れば、衣や住の面でも先人の知恵がいっぱい詰まっています。町家に暮らさせていただいている者は、この知恵を死蔵せずに、機会あるごとに発信する努めがあるのではないかとも思えてきました。 またこれからも意匠会議の皆様とともに、いろいろとアイデアを出し合って、楽しんで暮らしていきたいと思っています。 (京町家・暮らしの意匠会議会員)
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