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京町家友の会


 まだ肌寒さが残る3月11日日曜日、京町家再生研究会本部の小島邸で、「松風」のお話と謡を楽しむ会を開催いたしました。これは3月8日の「町家の日」の関連行事として、京町家再生研究会・京町家友の会が共同主催したものです。京町家の住まい手である町衆がかつて楽しんだように、京町家のお座敷ならではの楽しみを体験してみたいという会員さんからのご要望をうけ、企画しました。20余名の会員さんにご参加いただきました。

 今回は、京都府立大学の山崎福之先生にご解説をいただきながら、観世流能楽師の藤井千鶴子先生、山崎芙紗子先生、山崎浩之先生、三木成弘先生に謡をご披露いただくという、とても豪華なものでした。

 ご出演の皆様のご紹介を少しいたしますと、山崎芙紗子先生は山崎福之先生の奥様、重要無形文化財綜合指定保持者でいらっしゃる藤井千鶴子先生は山崎芙紗子先生のお母様、山崎浩之先生は山崎ご夫妻のご子息です。当日は、お嬢様の茉莉子さんもお手伝いにいらっしゃいました。

 さて、今回の謡の会の会場は、小島邸のお座敷です。春の若々しい緑と優しい光があふれるお庭を背景にして、毛氈を敷いただけの舞台をつくりました。その舞台の前に、お座布団を並べた客席があります。舞台の真ん中に謡の先生方、向かって左側に山崎福之先生がお座りになりました。まずは山崎福之先生から「松風」がどんなお話なのか、どういう時代のものなのかを、お話しくださいます。そして謡の先生方に「松風」の謡を少し演じていただきます。山崎福之先生が「さあ、皆さん、これで皆さんがいらっしゃる町家のお座敷に、松風の舞台、須磨の浦の景色が広がっていきました」とおっしゃると、観客の皆さんから、感嘆のため息がもれました。



 山崎福之先生のやわらかな口調のご解説が入り、謡の先生方が妖艶な松風を演じられる。それを何度か繰り返しながら、「松風」のお話しがどんどん進んでいきます。「松風」に描かれている時代のお話しも、この「松風」がよく演じられた時代の話も取り入れながら、日本語のことばの面白さ、それをどう昔の人が楽しんだのか、丁寧に山崎福之先生がお話しくださいました。演じ手である山崎芙紗子先生はお母様と娘時代から演じておられ、初めて演じたときのエピソード、長年ご一緒に演じてこられた思いもお話しくださいました。謡の世界は決して昔の人のものというのではなく、今を生きる私たちにも理解でき、つながっている文化なのだ、もっともっと知りたいし楽しみたいと思うことができました。

 先生方の舞台が終わった後は、先生方もご参加いただいて、参加者の皆さんとともにお茶の時間を楽しみました。「松風」の装束のお人形や舞台の様子のお写真、昔の手習いの教本なども、先生がお持ちくださっていましたので、それらを拝見しながら、それはそれは和やかに、笑い声の絶えないお茶の時間を過ごしました。

 事務局では、このような謡など、住み手がかつて楽しんだように、町家のお座敷で伝統芸能を楽しむ会を企画したいと考えております。脈々と続く文化の中に、私たちも生きているのだという実感と、私たち自身が文化を楽しみ守っていく担い手であることを感じながら、会員の皆さんと共に町家の保存再生に取り組んでいきます。ご参加よろしくお願いいたします。

<惣司めぐみ(京町家友の会)>