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京町家友の会
会長とティータイム
◎第3回……たま妓にて(2010年11月25日)
〈松村篤之介(友の会会長)〉


たま妓にて
●この家(たま妓)はかつて小学校の同級生の家でした。私は昭和8年の入学で龍池小学校です。この町内には同級生がたくさんいまして、この家でも子どもの頃走り回って遊んだ思い出があります。非常に懐かしいところです。

●チリの鉱山の落盤事故では、リーダーの統率力が立派でしたね。人間切羽詰まると地が出るというか、己を最優先に考えてしまいがちです。その中であの長期密室の状況で皆を取り仕切って規律を作り、33人の最後に地上に上がって来たリーダーには教えられることが多かったと思います。
 リーダーは「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」と言います。これは連合艦隊長官山本五十六の言葉ですが、やはりリーダーシップというのは大切ですね。最近私が強く感じたことです。

●私は海軍の同期だった友人のつながりで司馬遼太郎記念館の友の会に入っており、先日この交流会の10周年でオランダに行ってまいりました。かつて私の会社はオランダに工場がありましたので、年に1〜2度は仕事で行っていましたが、今回初めて観光目的で1週間余の旅をしてきました。
 オランダは九州よりちょっと大きな国で、人口1600万人です。灌漑や治水技術が発達しており、明治期の日本の土木技術はみなオランダから学びました。木津川の治水もオランダから学び、砂防堰を作り、山に植林をすることで災害を最小限に抑えることができたようです。
 オランダでは高速道路が無料でスピード制限がありません。自分で自分の運転技術を見極め、能力に応じたレーンを走るようになっています。日本にはない考え方ですね。
 道路ではエコの面から自転車が最優先。自転車専用レーンがあり、人よりも優先です。
 また、尊厳死を世界で初めて法律上認めた国です。さらには大麻を法律で禁止しておらず、後遺症のない大麻を認めることで、さらに進んだドラッグに手を出すことを防ぐ、というのが考え方だそうです。日本は物事を国が規制するお国柄だけれど、オランダは一人一人の判断を重んじる姿勢を国がリードする。禁止することで悪が水面下に潜むより、ある程度のことは認めて、あとは個人の判断にゆだねようという考え方のようです。
 国によって考え方というのはずいぶん違うんだなあと思います。どちらもそれぞれの考え方はありますが、日本の国を経営して行く上で、国民一人一人がどういう国のあり方を望むか、自己責任を持って生活していける国民を育てなくてはいけないと思います。

● さて、今日はこういう言葉を用意してきました。
 「人生に五計あり」〜生計 身計 家計 老計 死計〜
 これは中国の言葉ですが、私が現役当時入社式で新入社員に贈って来た言葉です。やはりどんな方も、人生に計画をたてておくことが大切なのではないでしょうか。まずは、ご両親の愛情あふれる思いを受けて生を受けたのですから、そこにある生計を忘れずに。そして成長して親離れするという形で身を立てる。また結婚したら、自分の家計を築き、自分の一家の計画を立てることも非常に大切ですね。それから人は必ず老いていきますから、どう後半の人生を過ごしていくか、人生も長くなっておりますのでしっかり考えてほしいと思います。さらには誰もが必ず死にますから、自分の人生をどう締めくくるか、心の準備もさることながら、まわりへの対応も含めて考えておかねばなりません。
 そんな思いを込めて、「人生に五計あり」。今日はこの言葉を皆さんに差し上げたいと思います。

* * *

 今回のティータイムではオランダと日本の比較文化論に花が咲きました。歴史的には古くから交流の盛んだったオランダと日本ですが、意外にもその考え方には大きな差があることを知り、驚きの声が上がりました。一方、アメリカでのパーティー運営方法などのお話も出て、考え方にはいろいろな違いがあること、いろいろな考え方を知った上で自分はどうするか考える必要がある、という締めくくりとなりました。国対国の大きな問題に限らず、人対人の身近な問題についても同じことが言えるなあと考えさせられました。
〈小林亜里(友の会通信担当)〉

2011.3.1