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はじめに京町家再生研究会京町家作事組京町家友の会京町家情報センター

2004年度11月〜2月 景観・まちづくり大学・後期講座案内
京都市景観・まちづくりセンターにおいて、京町家再生研究会の企画で開催された
「京町家再生セミナー」の記録です。

第5回 2/3 (木) 18:00〜20:00
「石塀小路界隈の町家改修」
講師:上村榮一氏(元石塀小路大家・町家居住者)
    堀内 健氏(京町家作事組理事・施工)
コーディネーター:木下龍一氏(京町家作事組理事・設計)


2月3日、第5回の「京町家再生セミナー」が開催されました。今回は八坂神社の南側、高台寺のすぐ近くにあります石塀小路について、どのようにしてつくられ、維持されてきたかということについてお話しいただきました。お話いただきましたのは、この石塀小路を明治の終わりから大正の初めにかけて実際に作り上げられた上村常次郎さんのお孫さんにあたり、今でも石塀小路の維持にかかわっていらっしゃいます上村栄一さんです。もうひと方は、京町家作事組のメンバーで、この地域でいくつかの町家の改修を手がけてこられた堀内健さん。そして、コーディネーターには京町家再生研究会の幹事で、作事組の幹事でもあり、堀内さんと一緒に石塀小路の町家の改修にあたられた木下龍一さんです。
 まず、上村さんから、石塀小路の開発の歴史的な経緯、開発の過程、町並みの形成についてお話いただきました。お話は、この地域に平安時代、鎌倉時代にできたお寺のお話からひもとかれ、改めて京都の歴史を感じます。
この地域は古くから社寺の門前町として栄え、ねねの伝統を継ぐ由緒ある芸者の町として発展してきたそうです。そんな地域の伝統と周辺の開発の状況をふまえ、上村常次郎さんは開発の構想を立てていきました。実際の施工には林幸次郎さんという大工さんにすべておまかせしたとのこと。敷地の高低をうまく解決するために路地を切り開き、石垣を積んだり、高塀を作ったりして、美しい路地空間をつくってゆきました。ここは、ひとりの開発者と、ひとりの大工さんが相談して作り上げた町並み景観だったわけです。
 このようにしてできた石塀小路がどのようにして守られてきたかということについて、
3つの要点を述べられていました。ひとつは、天災や火災、戦争などの被害がほとんどなかったこと、二つ目は、一人の所有者が長年にわたって所有していたということ、三つ目は、そこに住む人の仲間意識とか協力があったということをあげられていました。
 石塀小路はいまでも独特の落ち着いた景観を保って、多くの観光客でにぎわっていますが、それが一人の開発者と一人の大工さんの構想から生まれたということが、とても印象的でした。そして、そのお孫さんが今でもそれを守り続けていらっしゃるということを知って、よいものを守り伝えることの大切さを感じました。