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京町家再生研究会

寄稿◎「まちセン」を振り返って

平家直美(都市計画局都市企画部都市総務課担当課長)
 平成16年4月に、(財)京都市景観・まちづくりセンター(以下、「まちセン」と略します。)から都市計画局に異動しました。3年間お世話になったまちセンを振り返って、個人的な思いを書き留めてみようと思います。特に、京町家の保全・再生に関しては、京町家再生研究会をはじめ京町家ネットの皆さんとは、様々な面でかかわりが深かったと感じています。
 まちセンでの最初の仕事は、「まちなみ住宅」設計コンペでした。当時は中京区の元龍池小学校にまちセンの事務所があり、講堂に展示された100を超える作品に目を見張ったものです。わずか12戸の建売住宅の設計競技でしたが、全国の設計者から作品の提出がありました。異動したばかりで、事業の中身はよく分からなかったのですが、大きなエネルギーを感じました。後日、この事業の仕掛けの意味が少しずつ理解できるようになりました。土地利用の転換や開発に、いかにして地域の生活者が主体的に関わるかがプログラムに組み込まれており、まちセンの全ての事業に共通する理念だと感じました。
 次に、京町家の相談制度を立ち上げるために、京町家の保全・再生に関わる市民活動団体の方々に相談をし、「それぞれの団体が、丸くテーブルを囲むような位置関係でお互いに情報交換が出来るようにしましょう」というアドバイスを受けました。平成13年9月から「京町家なんでも相談」を開始しましたが、市民の方々は、京町家の維持・継承に関してたくさんのハードルを抱えていらっしゃることが改めて明らかになりました。特に、改修については専門的な事柄も多く、なかなか前に進めないものです。少しでもハードルを低くしようということで、写真やイラストを活用して分かりやすい資料を提供しようと考えたのですが、改修の資料は、実際の改修事例が最も説得力があります。多くの関係者、市民の方から、資料とともに「役立ててほしい」と強い気持ちのこもった言葉を頂き、京町家の保全・再生の大きな流れを肌で感じました。再生研の皆さんには、編集方針や原稿へのご意見をいただき大変助かりました。平成15年1月に「なるほど!京町家の改修〜住み続けるために〜」を発行できたのは、多くの方々の熱意に支えられたからだと確信しています。
 まちセンの新しい拠点が、下京区の菊浜小学校跡地の「ひと・まち交流館 京都」地下1階に整備されることになり、「庶民の目でまちづくりの歴史を見直してみよう」という目的で研究会を立ち上げ、庶民がどのように都市を「住みこなしてきたのか」を研究しました。平成15年6月の末に新施設に移転し、まちセンは新たなスタートを切りました。1階の展示コーナー「京のまちかど」は、この研究成果を生かしていますので、是非、まちセンを訪れていただきたいと思います。
 3年間のうち、特に後半の2年間は、京町家に関する環境の変化を強く感じました。全国的にも、地域に立脚したまちづくり、とりわけ、地域の歴史や伝統をしっかり受け継ぐことがまちづくりの根幹になってきていますが、京都における市民の京町家の保全・再生の取組が少なからず影響していると言っても決して過言ではないと思います。まちセンには、本当に多くの問い合わせがありました。
 しかし、京都は、まちセンが設立された頃の状況が改善されているわけではないと思います。地域の活力の低下やコミュニティの弱体化は、常に京都の都市特性を揺るがす要素です。この課題に果敢に対応するため、市民にとって身近な課題については、市民が責任ある立場で具体的に取り組み、まちセンはこれを支援するという地域まちづくりの推進は益々必要性を増しています。「京都の人格(アイデンティティー)とまちセンの事業は密接不可分だ」との思いを改めて強く感じています。

2004.7.1