「京町家の大切さの理由」─アンケート調査の結果報告クリストフ・ブルマン(ケルン大学・文化人類学者)
国立民族学博物館にて研究員として1998〜2001年の間、一年半ぐらい京都に滞在し、景観論争や歴史都市の現状を調査しました。2001年の暮れ、研究会事務局のご好意に恵まれ、再生研・作事組・友の会会員の皆様59名に、京町家に関するアンケートを行うことができました。大変遅くなりましたが、回答して下さった方々にあつくお礼を申し上げるとともに、集計結果を報告させていただきます。アンケートは会員の個人的な京町家の保存・再生の動機についてであり、回答者に横の表の項目に◎・○・×印をつけていただくようにしました。平均すると、◎印が2個、○印が12個、×印が5個つけられていました。まちづくり・観光・美術・経済発展等のために町家がその資源になるという可能性はこのごろよく強調されているものの、集計を見ると、町家のそういう、いわば間接的なメリットは、会員の方々にとっては強い動機にはなっていないようです。むしろ京町家の象徴性、つまり町家が京都・日本・日本建築を代表するものであるということが、回答者の過半数によって挙げられていました。それよりもさらに目についたのは、京町家にある直接的な長所に関する項目でした。それは美的・精神的な効果(美しさ・景観との調和・落ち着き・雰囲気)や自然性(四季・木造・環境・庭)にあり、その項目の回答はいずれも6割か7割を超えていました。伝統性(伝統的・伝統行事との繋がり)に関してもほぼ同様で、「伝統的だから」と「古いから」という両項目間の大きな差からは、文化財的な歴史の深さばかりでなく、今なお生き続いている文化が加わってこそ町家の魅力があるという見解が伺われました。過去の事柄を強調して聞いた項目(先祖・子供時代の思い出・旧型家族制度)への肯定的回答はそれに比べて少ないです。ただの懐かしさより京町家にこもっている、いわば「未来性のある伝統」が大事だということが明らかになったでしょう。京町家の特異性を強調する項目(上品・おしゃれ・現代文化との隔たり)はあまり取り上げられず、特に流行物としての町家の捉え方は回答者の過半数によって否定されていました。現代生活において、普通に存在してこそ町家とその再生の意味があるという見方が浮き彫りになりました。 皆様のご協力のもと得られた、今回のアンケートのデータを通して、「京町家二会一組」の会員が何か別の目的のためではなく、むしろ純粋に町家の本質を求めて保存・再生活動をなさっていることが明らかになりました。その点では、最近京町家を取り上げている様々な社会的動向とは、場合により、大きな差があると言えるでしょう。京町家そのものに対する理解と評価をさらに深め、そのギャップを埋めていくということに今後の課題が残されているのではないでしょうか。 問:京町家はあなたにとってなぜ大事で、保存・再生すべきですか。以下の項目の内、ご自分に当てはまる理由に○印、当てはまらない理由に×印、どちらかとも言えない理由には何もつけないで下さい。特に強く当てはまる理由があれば◎印をつけて下さい。
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