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京町家再生研究会

寄稿◎京町家等建築物再生・活用による都市再生
─国の調査がはじまります

岸田里佳子(京都市都市づくり推進課)
都市再生プロジェクト推進費の選定
 この10月4日、政府の都市再生本部(小泉総理大臣を本部長とし、全閣僚がメンバーとなっている法律に基づく組織です。)において、国の調査である都市再生プロジェクト推進費「都市における京町家等伝統的工法による建築物再生・活用方策検討調査」が決定されました。

 京都市は、平成13年7月に都市再生本部に対して「歴史と文化を継承した美しいまち,京都の実現」をテーマとした都市再生プロジェクトの提案を行うなど、京町家などの伝統的な木造建築物のストックを活かした都市再生について要望・協議を行ってきました。
 これを受けて、国においては、平成13年12月の都市再生本部三次決定として「京町家をはじめとする都市の中心市街地の建築物について、伝統的な外観の継承や居住性の向上を図りつつ、再生・活用に向けた取組みを強化する」という方針が盛り込まれたほか、平成14年度からの新たな仕組みとして、京町家等の木造建築物も対象となる「建築ストック活用型再生賃貸住宅制度」が整備されるなど、少しずつ取組が進んできたところです。さらに今般、具体的な課題に着目して、国が調査を行われることが決定したことは、本市の担当者としても、また私個人としても非常にうれしく思っているところです。この機会を実りあるものとするためにも、地元自治体としてしっかりと国と連携を取り役割を果たしていきたいと思います。

 この調査の具体的な内容はこれからなのですが、京町家などの伝統的木造建築物の課題については、既に本市の呼びかけで国土交通省の担当部局と同様の課題を抱える関係市の担当者が集まり検討を開始しています。
 具体的には、例えば構造については、通常の構造計算が難しい場合に審査する方法として法律に定められている「限界耐力設計法」を、もっと多くの普通の町家に使えるようにするためのマニュアル化などのアイデアなどがあります。そうすることで、お金と手間をあまりかけることなく法律上の課題をクリアすることができ、改修などに係る融資が受けやすくなるのではないかといった期待もあります。
 しかしながら、国費による調査であり、期間も金額も限られるなかですので、京町家に関するすべての問題をこの調査で解決することは不可能です。まず何をしなければいけないのかを明らかにしつつ、集中的に課題解決をしていきたいと考えています。
 その中では、さまざまな研究機関、市民団体等において先行的に取り組まれてきた知見を活かしながら、足りない部分を補うように進めていくことが効率的なのではないかと考えているところです。今後とも、皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。

京都市独自の取組について
 本年10月、本市市会において、「京都市伝統的景観保全に係る防火上の措置に関する条例」が可決されました。これは、本市の伝統的な建築物及びこれにより形成されている歴史的な町並みの景観を保全・継承するため,一定の指定された地区で、伝統的な建築物と認められた建築物については、今までよりも伝統的な意匠を活かした建て方がしやすくなるようにしたものです。今後、条例が施行され、対象となる地区が指定されていくこととなります。
 また、上述した国の新しい制度「建築ストック活用型再生賃貸住宅制度」を京町家について実現化するための検討も今年度より開始しています。これは、特定優良賃貸住宅(とくゆうちん)と同じような仕組みを京町家でも可能とすることを考えているものですが、一軒を分割して共同住宅化しなければならないなどの要件があり、町家の風情を保ちながら、複数の世帯が住むための安全をどのように確保していくべきなのか、木造建築物ならではの悩みはつきません。

 これらの課題をクリアしていくためには、実際の町家でケーススタディをしていかなければならないと考えていますが、町家をお持ちの皆様の中で、もし、このような調査検討に協力しても良い、とお考えの方や、良質な賃貸住宅に改修して維持することに興味があるという方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。
 以上、国の動きや京都市の取組状況についてご説明いたしましたが、引き続き都市づくり推進課では、市民の皆様とのパートナーシップの下、京町家の再生に向け取り組んでまいります。よろしくお願いします。