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京町家再生研究会
京町家再生研究会 活動報告

12月例会「仕出しを楽しむ」



   寒暖差が激しい今年の冬の中でも、とびきり寒かった12月9日、京町家友の会の会員の皆さんと共に、仕出しのお食事を楽しみました。今回、仕出しをお願いしたのは、京町家友の会本部の近隣にある明治40年創業の「井傳」さんです。

   お料理をお出しする前に、まずは井山和彦さんからお話しを伺いました。数年前にも先代ご当主にお話を頂きましたが、今回は四代目ご当主がきてくださいました。井山さんには、京都の仕出しにまつわるお話だけでなく、京料理を支える料理人さんのお話、京都の「息子はん文化」もお話しくださいました。
   仕出しは、京都の人々の暮らしの節目になくてはならないものです。なにかお祝い事があったとき、仏事があったとき、お客さんがいらしたとき、京都の人々は地域にお店を構えておられる仕出し屋さんにお願いをして、お料理を持ってきてもらいます。井傳さんも、室町界隈の人々が厚い信頼を寄せているお店です。
   井山さんのお話はどれも面白いものばかり。まずは、京料理の料理人さんのお話を聞かせてくださいました。料理人さんの世界、特に京料理は、一般人にとって敷居が高くて、閉ざされた世界のように思うのですが、実はお店が違っても、料理人さん同士の交流が盛んで、いろいろな技を教え合い、一緒に切磋琢磨し、次世代の育成をするのが当たり前の、風通しのよい世界なのだそうです。井山さんが「うちは井傳ですが、秘伝はありません」と笑っておられましたが、井山さんをはじめとする料理人さんたちが受け継いできた技や味に、自信を持っておられるからこそできることなのではないでしょうか。これは京町家の生活文化や町家を直す技術の継承にも通じるものです。
   お店から運ばれてくるお料理は、一人ずつ美しいお重につめられています。そこに暖かなお椀がついています(これは仕出しをとった家の人が温め直します。今回は小島さんとお嬢さんが温めてくださいました)。お重に入ったお料理の味付けは、お料理が冷めている状態で食べられるのを前提にされているので、お出汁がしっかりきいていて、素材のうまみが際立っています。皆さん、顔をほころばせながら和やかにお食事をされました。

   さて、興味深い話、「息子はん文化」ですが、料理人や職人さんであれ、お商売をされている方であれ、息子さんは、「どこそこさんの息子はん」でみんなに知られることから始まるという文化が京都にはあるというものです。(もちろん、娘さんもそうですよね。)当代になっても、やっぱりしばらくは「息子はん」。そういえば、小島さんが井山さんをご紹介されたときも「息子さんの〜」と!井山さんの横でこのお話を聞いておられた小島さんも、あっ!と口に手を当てて笑っておられました。
   また季節を変えて、楽しいお話と、季節のお食事を皆さんとともに頂きたいと思います。


<惣司めぐみ(京町家友の会)>

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