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京町家再生研究会
小島 富佐江(京町家再生研究会理事長)

祇園祭会所の再生 WMF(ワールド・モニュメント財団)の修復支援事業

 再びWMFによる支援事業が始まることとなった。新しい年の始めにはいってきたのは、四条町大船鉾の会所となる町家の修復に対する支援決定の吉報だった。四条町が会所を取得されたというお話を伺ってからかれこれ半年の時間が経過したが、その間にWMFとの協議を重ね、釜座町町家、旧村西家に対しても多大なご支援をいただいたフリーマン財団がご協力してくださることとなった。四条町の会所が新たに整備されることは、大船鉾の復興とともに大変喜ばしいニュースであり、その修復に関わることは大変意義深いことである。

 WMFとの出会いは2008年11月に開催された京町家保全・再生のためのシンポジウムならびに日米の歴史的建造物に関わる専門家の協議にボニー・バーナム理事長(当時)がご参加下さったことから始まっている。WMFは京町家の保全についてニューヨークの本部で我々に現状説明の機会をもうけ、町家の保全に協力を申し出て下さるという前向きな対応に我々もとても力を得たことを覚えている。その後WMFのウオッチリスト(危機遺産)に2009年、2011年と続けて登録申請をし、採択されたことが、釜座町町家、旧村西家住宅につながり、今回の会所修復事業へと続いている。最初のきっかけを作って下さった立命館大学リム・ボン教授のご尽力にはこの紙面を借りて本当に心からの感謝を申し上げなければならない。リム・ボン教授のニューヨークで町家のシンポジウムを!というご提案がなければ、これまでのプロジェクトは違っていただろう。日本ではなくアメリカ ニューヨークという発想を私たちはそれまで持っていなかったのだから。いまでこそ当たり前のように海外とのやり取りが取り上げられるようになったが、10年前のこのプロジェクトはとても大きなことだったと今は思っている。  ニューヨークジャパンソサエティ、京都市景観・まちづくりセンターともこのプロジェクトを通して、相互に大きな経験を重ね、新しい取組を進める力を得たことは京町家の再生に取っては画期的なことであった。

 さて、今回の対象となる町家は昭和初期に建てられたものであるが、これまでの町家同様に内部は時代にあわせ、改変が重ねられている。今後、お町内、WMF、まちづくりセンター、再生研、作事組をメンバーとする検討会を経てお祭の会所の役割を持った町家として修復が進められることとなった。新町通りには船鉾、放下鉾、北観音山、八幡山と伝統的な形の会所が並ぶが、そこに新たに大船鉾の会所が仲間入りし、新町通りの会所はさらに充実することとなる。この町家は収蔵庫としての機能も併せ持つこととなり、大船鉾の大きな部材を奥に収納する。これまでの町家とは違った機能も必要となるため、修復についてはしっかりと議論を重ねたいと考えている。研究会としては、船鉾、八幡山に続く案件であり、祇園祭の会所の成り立ち、形など今年の大きなテーマとして取り上げたいと思う。昨今、近隣の大型町家がいくつも姿を消し、町家を存続させることの大変さを痛感しているが、この取組がまちなかに大きな力を与えてくれることになると信じている。


記者発表当日の様子
 2016年2月10日に四条町大船鉾会所においてWMFの支援決定についての記者発表があり、関係者が集まり、会見を開いた。

 WMF日本代表の稲垣光彦氏より、今回の取組みについて、約28万ドルが今回の修復事業にたいして支援されるという報告があった。前述の通り、支援はWMFのパートナーであるフリーマン財団によるものであり、今回で3期目の支援である。

 工事の内容については作事組末川氏より報告があり、修復工事は今年(2016年)7月の祇園祭が終わってから本格的な工事にはいることが発表された。お祭の会所としての形を踏襲して、1階の庇は板葺き、道との一体感を持たせるために現在の昭和初期型は格子を外せるように改修されることとなった。2階にはお祭の神事が行われる場を作り、鉾にわたるための橋がかりがもうけられる。(これまでは道から鉾の上に上がっていた)

 2017年6月には完成の見通しで、新しい会所の姿がお祭に見えることとなる。

2016.3.1