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京町家再生研究会
小島富佐江(再生研理事長)

平成25年度事業報告

 新年度が始まりすでに3ヶ月が経過しました。本年度は地域との連携が大きなテーマとなります。かねてから本部のある明倫学区とは様々なやりとりをしておりましたが、作事組が釜座町に事務局をおいたことによってよりいっそう学区やお町内とのつながりが強くなっているように感じられます。都心ながら昔からの暮らしぶりが今もしっかりと継承されている町中、本年はこれまで以上に地域との関わりを意識し、連携を深めたいと思います。

 さて昨年度の事業報告をさせていただきます。
 昨年度は法的な制度を見直すことを中心に研究会を進めて参りました。大きなテーマとしては「京都市伝統的な木造建築物の保存および活用に関する条例」(建築基準法3条の適用除外)の運用にたいして、研究者、行政、建築士それぞれの意見を聞き、また意見交換の場をもうけ、実践をふまえた問題点などを検討して参りました。
 京町家再生研究会発足当初より町家を保全するためには木造に対する法律の見直しが必要であるということを訴え続けておりますが、近年ようやく木造を取り巻く環境整備を整えるための動きが出てきております。町家を健全に保全するためにはまだまだ不十分ではありますが、これまでの経験を生かし、より一層の努力をしていきたいと思っております。
 また、地域との関わりも重要な課題として、祇園祭山鉾の軸組に関わる設計監理業務を続けております。軸組の調査を継続しており、山鉾軸組の実測図面化を進め、伝統的な技術の継承に対しての一助となるべく担当者が努力をしております。
 一方では、釜座町町家、本部でのお茶会などを開催し、お町内や学区の方々とのやり取りの機会を増やしております。特筆すべきは、研究会のメンバーが関わり釜座町町家でお町内の方々の茶道クラブのお稽古が行われております。そのメンバーが中心となりお茶会の開催ができたことは釜座町町家(作事組事務局)が地域の場としての大きな役割を担いつつあるということだと思います。最近は祇園祭のお囃子のお稽古場として使われるなど、地域の動きがじかに伝わってくる場となっていることに喜んでおります。
 京町家の保全再生というのは本当に地味な活動であると思いますが、それでも長年の活動に対して近年様々な賞をいただいております。昨年9月には「京町家の保全・再生に向けた取り組みの推進」として京都創造者賞〈もてなし・環境部門〉をいただきました。
 本年2月にはワールドモニュメント財団のご協力のもと昨年同様に東京でのシンポジウムを開催いたしました。近年、京都、京町家に対する興味や理解が深まるにつれ京町家に暮らしてみたいという方々も増えております。保全・再生をさらに進めるために京都以外の方々にも応援をしていただこうと企画したシンポジウムであり、作事組のお施主さん、京都の伝統に携わっていらっしゃる明倫学区の方にパネラーとしてお話をしていただきました。評判もよく、実りのあるシンポジウムとなりました。
 さて、本年度はこれまでの継承に加え、若手の育成についても検討を進めたいと考えております。作事組棟梁塾では若手技術者の育成が成果を上げておりますが、当研究会でも次の担い手をどのように育てていくかが大きな課題となっております。木造に対する興味、技術をどのように引き上げていくのか、木造の知識を持ち、健全な保全計画のできる若手がこれからますます必要になってきます。
 京町家再生研究会は平成4年に発足し、22年が経過しました。これからも町家の保全再生に対しての活動を続けて参りますが、活動継続、継承には多くの方々の手と知恵が必要となります。皆様方のこれまで以上のご協力をお願いいたします。
2014.7.1