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京町家再生研究会
梶山秀一郎(作事組理事長)

作事組全国協議会第2回総会を終えて


第2回作事組全国協議会総会シンポジウムの様子
 全貌の見えない甚大な被害に遭われ、未だに被災が続く東北、関東の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。そして、復興の道筋が見えるようになるのが一日でも早からんことを祈ります。
 既に高台に住宅、海岸沿いに高層ビルの林立という拙速な政府の構想が出されたが、早急な復興を前提にして、伝統木造軸組構法と在来のそれの分別をつけないまま、被災した木造を一掃した阪神淡路の反省を踏まえ、綿密な調査と検証をしたうえで、復興計画がなされることを望む。そしてなによりまちの再生は地域の方々が主体的に進めることが必須条件と考える。

 福岡の八女に作事組の仲間が集結した。作事組の全国組織をつくろうと呼びかける際、京町家作事組が抱える問題が、京都に限られたものだと思われないかを心配した。しかし、呼びかけに応じた方々はその課題が各地域に共通していて、かつ喫緊であるとの応答であり、むしろ背を押される形で、呼びかけに答えた八女、姫路そして京都のグループにより、08年8月30、31日に姫路で準備会合が開かれ、そこで決定された第1回総会が09年2月21、22日に京都で開かれた。今回は2年ごとに開かれる総会の第2回目である。
 市民と行政が一丸となって重伝建地区の町家の保全、再生とまちづくりに取り組む八女の姿は、総会への市長の出席、懇親会への副市長の参加など、目に見える形で示された。また、総会、分科会など関連行事は、町家の保全、再生同様に市民、行政協働で準備万端ぬかりのないものであった。とりわけて印象的であったのは、もともと各地域の結びつきが強いとされる九州の、各地域の活動グループの参加であった。八女の仲間が作全協への参加候補として積極的に呼びかけた結果であるが、総会関連行事が相手の気持ちを汲む方言と合せて大変地域色豊かなものとなるとともに、総会を各地域で開催することが、仲間の輪を広げるという大きな意義を見いだすこととなった。参加は29団体、他の3活動団体及び自治体や大学関係者などの134名であった。
 総会後のパネルディスカッションは萩の「萩つくる会」、佐賀県鹿島市・重伝建地区内にある茅葺き町家の改修事例、八女の「八女福島遺産保存活用プロジェクト」そして京都の「釜座町町家の再生・活用プロジェクト」の各活動事例報告があり、活動を始めたばかりの地域が普及や活動の形を模索する苦労、自らが町家を取得したり取得費や改修費を活動家自らが出資するという、覚悟の定まった事例が紹介された。
 2日目の分科会のテーマは「町家の法的適合化への現状と課題」、「町家の技の再生、習得、継承」という作全協の課題にぴったり重なるものと、「伝統構法と産直地場住宅への挑戦」という地場産業との関連に広げた3つに分けて事例報告と議論がなされた。当然ながら、町家は地域の暮らしとなりわいの器であり、町家や町並みにとどまるものではない。報告された事例は試みの段階であったり、必ずしも地域ぐるみの活動とはいえない面もあるが、山や林業の再生と伝統木構造の復権を合せて計ろうとする実践は、地域の気候、風土、文化、暮らし、産業に育まれて形づくられた町家の再生を果たす可能性を、再認識させるものであった。
 当集会のまとめとして示したことでもあるが、今回の議論も踏まえた作全協の直面する課題を挙げれば、
(1) 伝統木造構法である町家の法的適合化の達成と、それが果たされたときの安全や質と技を担保する組織やしくみの構築
(2) 形や働きだけではなく、暮らしやなりわいの器−町家は快適で儲かる−としての町家の保全、再生の普及
(3) 山や川の再生、地場産業を含めた包括的な地域の再生と重ね合わせた町家の再生
になる。さりながら、これからまちやを守り活かす活動を始めようとする方々、ないしは活動をどのように進めようかと迷う方々が手がかりを見いだし、模索を続けるグループが勇気と確信をもらったであろうことが、今回の八女総会の最大の成果であった。
2011.5.1