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京町家再生研究会
大谷孝彦(再生研理事長)

釜座町町家再生のお披露目シンポジウム
 新年明けましておめでとうございます。昨年はワールド・モニュメント財団(WMF)の支援を得て釜座町町家の再生が実現し、作事組事務所、そして京町家ネットの事務局が開設されました。今後の活動にとって、新たな日の出となります。皆様、本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
 昨年11月12日、WMF支援プロジェクトとして修復された釜座町町家のお披露目が行われました。WMFのヘンリー副理事長と稲垣日本代表、また京都市長、京都市景観・まちづくりセンター理事長他が参加され、京町家の空間とお庭の風情に満足していただけました。お茶会はご町内の大西さんが亭主を務めてくださり、床飾りやお道具類も由緒ある立派なもので釜座町の歴史の重みを感じました。お茶会の後は京都府文化博物館の旧館にて、町家修復の経過と、この事業に関わるWMF, 京都市景観・まちづくりセンター、京町家ネットの活動を紹介するパネル展示、およびレセプションが行われました。翌日の13日には元明倫小学校の京都市アートセンターにて再生研究会主催のシンポジウムを開催しました。立命館大学教授のリム・ボン先生にコーディネーターをお願いし、パネラーには釜座町ご町内の長谷川氏と明倫学区を代表して吉田孝次郎氏に参加頂きました。長谷川氏の「今回のプロジェクトをきっかけに御町内の様々な歴史が改めて蘇ってきた」とのお話が印象的でした。吉田氏は学区内の歴史ある大型町家の今後利用、祇園祭の大船鉾の復活、山鉾巡行の後の祭り再現のことを熱っぽく訴えられました。今後、我々はこの町家を拠点として地域に密着した活動を展開していかなければなりません。ご町内、あるいは明倫学区の皆さんと共に町家を軸に据えたまちづくりに取り組みたい。今回の町家再生の経過の中で既にご町内とは親密なお付き合いが始まっています。「明倫学区まちづくり委員会」、「マンションネットワーク」との連携も必要です。13、14日の二日間、町家オープンハウスには延べ300人以上の来場者があり、世間の町家に対する関心の拡がりが感じられました。
 そして、12月5日には、東京へ出向き、学士会館において、今回の町家再生の事例の報告とパネルディスカッションを開催しました。これは、日本の中心地において、町家再生の意義や手法を広めようという企てです。今年度発足した京町家友の会の東京支部の活動を支援する目的もありました。予想に反して120名もの方のご参加を得ました。WMF、及び、京都市景観・まちづくりセンターから、それぞれの活動内容と今回のプロジェクトの経過報告があり、その後、東京大学教授の西村幸夫先生にコーディネーターをお願いし、パネラーとしては、九州の「NPO八女町家再生応援団」代表の北島力氏、東京の「NPOたいとう歴史都市研究会」副理事長の椎原昌子氏にお出でいただきました。まず京町家再生研究会の小島事務局長から、京都では当たり前である町家についての説明がありました。ご町内の寄り合いや地蔵盆が行なわれる町内共有の建物の存在が他の都市にはないとのことで、京都のコミュニティーのあり方に関心が持たれたようです。北島氏からは平成5年、住民と共に取り組んだ「街並み環境整備事業」に始まり、今までに30棟に及ぶ町家再生があるとのこと、行政のノウハウと市民活動がうまく組み合わされた活動事例であると感じました。重要伝統的建造物群保存地区である八女福島地区において存亡の危機にあった重要な町家が一口30万円の寄付などによって見事に保存再生された事例の紹介があり、北島氏ご自信が行政の人でありながら、市民活動の組織作りから支援活動を骨太にリードされてきたお話に会場から感激の拍手が起こりました。椎原氏からは数年に渡る活動の中で、子供たちに木の住まいや暮らしの体験をしてもらう寺子屋、暮らしの手作り文化のある町としてのマップづくり、地域の大学生による掃除からシェアハウスとしての町家への住み込みなど地域と結びついた活動、また、まちづくりのプロフェッショナルのノウハウを活かした伝統的木造建物調査やNPO自らによる町家の維持管理・運営などの報告がありました。地域に根付いた、密度の濃い活動の歴史が感じられました。西村先生の巧な誘導で迫力のある話が引き出され、盛り上がりのあるディスカッションは大変好評でした。その後の懇親会では久しぶりにお会いできる人があり、また初めての方とはお互いの活動紹介や意見交換が行なわれ、東京で開催した意義を感じることができました。今後、機会を見つけてこのような出前シンポを継続したいと思います。友の会東京支部の皆様によるきっかけ作りに期待するところです。また、今年は今までに3回開催してきた全国町家再生交流会が開かれるはずです。個々の地域に根ざした町家再生を大切にしながら、また、そのような思いと手法を広く共有できる集いを続けて行きたいと思います。

2011.1.1