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京町家再生研究会
大谷孝彦(再生研究会理事長)

継続する活動
  新年明けましておめでとうございます。歳の初めは一年のけじめ、改めてまたこの一年を大切に過ごそうと決意する時であります。昨年は京町家作事組と友の会が共に活動10周年となり、両会の共同で「京町家ネットによる座談会」、「公開シンポジウム」や懇親交流会が行われました。町家再生の実践という専門性の高い分野と広く裾野を持って町家再生の普及と情報提供を行うという立場から、それぞれ京町家ネットの活動を力強く支えてくださっている両会です。昔から鶴亀の長寿に譬え、長く続くことはめでたいことと言われ続けてきました。今は長寿命建築、持続的社会など、続くことの必要性が必死に叫ばれています。100年以上の老舗も多い京都において、10年は決して自慢になるものではありませんが、しかしこの10年の区切りを迎えたことは大変めでたいことであると思います。また、情報センターは来年、10周年を迎えることとなります。それぞれ地道で活発な活動を展開し、大きな成果を残してきました。町家再生研究会は発足以来、本年の祇園祭で満18年になります。昨年11月には、町家再生の活動を続けてきたことに対して、有難くも文化庁長官賞を頂くこととなりました。
 その他、個別の活動においても、楽町楽家が5年、設計施工交流会が7年、全国町家再生交流会が3回、と継続した活動があります。楽町楽家は昨年度、48の会場で91のイベントが行われました。町家のいろいろな活用の場を通じて町家の良さを多くの人に五感で感じてもらおうということが目的であり、実際にこの5年間で多くの人が町家を体験し、町家の空間を再認識されました。これだけの催しを実施するためには過大な労力を必要とし、担当者のご苦労は大変なことだったと思います。多くの方から、今後の継続を願う熱いメッセージがあり、幸いなことに「町家に熱き思いを持つ若者たち」が今後積極的に参加してくれることとなり、継続が可能となりました。
 設計施工交流会は再生研、作事組と京都府建設工業協同組合、京都府建築士会が伝統木造の技術や感性を共に学び、共有することを目的に、お互いの工事現場や優れた木造建築、町並みの見学と意見交換を年に5回のペースで行ってきました。時には意見が異なり議論白熱の場もありますが、刺激を与えあい、生きた対話を重ねることが京都における町家再生を正しく持続させるためにも大切です。
 全国町家再生交流会は昨年の10月に「NPO法人金沢町家研究会」のお骨折りにより、金沢で実行され、全国からの参加がありました。我々京町家ネットが本物の町家再生の理念と手段を広く共有しようと思い立ち、初回と更に弾みをつけるための第2回を京都で開催し、その後を金沢の皆さんが引き継いでくださったものです。我々の思いが発展し、継続していくとは大変うれしいことです。
 昨年は、京町家作事組の呼びかけで、2月に作事組全国協議会が発足しました。各地で町家再生に取り組む29の団体が加入しています。各地域固有の伝統構法による建造物の保全、再生、継承を目的として、情報交換、相互支援、技術研修、政策提言などを行おうというもので、今後全国的な連携活動が展開されることと思われます。また、再生研では11月のニューヨークにおける京町家再生のシンポジウムに始まり、ワールド・モニュメント財団(WMF)による町家の危機遺産登録が実現しました。今後、具体的な町家再生とそこを根拠とした活動が始まる予定です。
 ニュースレターは66号を数え、伝統ならぬ最新の技術を駆使したホームページは内容を更新しながら広く社会に情報を発信し続けています。再生研究会の月例会は130件、作事組の改修物件数は142件、友の会の例会は41回、情報センターの取りまとめた件数は112件を数えています。今後もまた内容を充実させながら、発展的に継続して頂きたいと思います。
 今、地球環境問題や景観破壊の問題に関連して、町家建物やくらしの価値が見直されています。将来への夢と希望が町家に託されています。その町家は随分取り壊され、既に手遅れとも言われています。しかし、そこに連綿と続く歴史、文化の重みは不易であり、今後の社会、環境のあり方の根拠となります。そのような根拠をわきまえず、軽薄な町家の扱いが蔓延ると、これは軽い騒ぎすぎであり、そういうことを「おめでたい」ということもあります。我々は「めでたい」の裏表をわきまえて、確かな、本物の町家再生を目指さなければなりません。
 また、この一年、皆様と共に頑張ってまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

2010.1.1