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京町家再生研究会
京極迪宏(再生研常任理事)

第1回全国町家再生交流会を京都で
 ひたすら経済成長を追い求め、何よりも経済価値を優先してきた時代は既に過去のものとなった。人に優しく持続可能な社会を象徴する「癒し」を具体的に表す形あるいは器としての「京町家」が注目され、日本中で一種のブームを巻き起こしている。京町家特集があらゆるジャンルの雑誌の誌面を飾り、京町家を扱ったテレビ番組も多く、書店店頭には「京町家」が入ったタイトルの本が溢れている。
 これはまさにブームであり、残念ながら私たちが再生研として更には京町家ネットとして長年にわたって取組んできた「文化資産としての京町家の再生・活性化」を主題とした市民活動の結果によるものとは言い難い。私たちの主張とは次元の違った、一種の骨董趣味、懐古趣味を商業価値に置き換えた一過性の社会現象に過ぎない。市内中心部における不動産流通の世界において、つい最近まで「土地に残っている解体費の必要な古家」として敬遠されたものが、いつの間にか「憧れの京町家」に変身し、不動産業者も町家なら何でも「買い」と言う。職住一体あるいは都市住宅としての京町家が、飲食や物販店舗へ用途変更される事例が顕著であり、これが京町家ブームの実態である。
 この現象は独り京都でのみ見られるものであって、殆どの地方都市においては、その中心市街地にある町家の空家化が加速度的に進んでおり、地元商店街の低迷と相俟って地域の空洞化が深刻な事態を招いている。
 極端なブームと衰退、一見するとこの二つは全く相反する現象に映るが、その背景にあるのものは、独自の歴史を伝える地域の生活・文化の喪失に他ならない。こうした状況を鋭敏に捉え、文化資産としての町家の再生・活性化を軸として、地域独自の歴史と文化を掘り起こし再創造していく新たなまちづくりに取組む組織が各地で多様な活動を展開している。これらの組織はNPO法人、任意グループの他にも、職能団体、行政及び第3セクター等様々で、そのフィールドの違いによって抱える問題点、活動の進め方に違いがあるが、ストックを活かした都市再生が注目される今、お互いの活動を学びあい、自らの活動を振り返り再構築するための意見交換の場が強く求められている。
 私たち京町家ネットでは、志を同じくする全国の仲間に呼びかけ、来年6月京都に集まっていただき、町家再生・活性化に関する全国協議の場をもつことにした。京町家ネットが長年にわたって構築してきたシステムや活動実績を全国の人達に伝えることによって、町家再生・活性化の運動が全国的に拡大普及していくことを図るとともに、示唆に富んだ全国各地の事例を学ぶことによってこれまでの活動を検証し、今後の京町家ネット発展の糧にしていきたい。各地から集まる仲間が真摯な交流を通じて共通認識を深め、それぞれの活動にフィードバックしていく実り多い研鑚の場を築いていこう。
 既に実行委員会を組織して準備に入っているが、概略は以下のとおりである。
開催日:平成17(2005)年6月11日(土)、12日(日)
場 所:未定(京都芸術センター(旧明倫小学校)を予定)
規 模:150人〜200人程度
内 容:基調講演、京町家ネットの活動紹介、改修町家・改修工事現場の見学、交流懇親会、各地の事例報告、分科会、全体会議 等
 分科会については現在協議中であるが、4会がそれぞれ2つ程度のテーマを決めて担当することになっている。予定しているテーマは以下のようなものである。

作事組主催の「学びあい、広める会」の様子(2002年7月7日)
・町家再生・活性化の具体事例とまちづくり
・町家再生・活性化運動とパートナーシップ
・町家暮らしの魅力(歴史・文化・生活)
・町家継承のあり方
・町家の構造特性と改修手法
・職人の養成と技術の継承
・町家不動産の流通活性化
・町家再生・活性化と金融
 今回の会合が新しい全国組織の立ち上げに繋がる有意義なものになるよう、実行委員会で協議を積み重ねていきたい。京町家ネット会員皆さんに絶大なご支援をお願いするとともに、この企画に対してご提案、ご意見をお寄せいただきたい。

→京町家再生交流会についてはこちら
2004.7.1