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京町家再生研究会

全国町家再生交流会を終えて

  我われ「京町家ネット」が全力をあげて取組んだ「全国町家再生交流会」は6月11、12日の2日間、京都芸術センター(元明倫小学校)を主会場として開催された。4会合同の実行委員会が組織され、2004年5月29日を第1回として、開催日直前の6月6日まで実に13回を数える会合がもたれている。そして今年に入ってからは、この実行委員会に共催団体となった「(財)京都市・景観まちづくりセンター」の担当者にも参加していただき、パートナーシップを実践していただいた。
 京町家ネットという市民活動団体が初めて全国の仲間に参加を呼びかけた記念すべきこの交流会の案内チラシには、冒頭以下のような主旨が書かれている。
「京町家」が注目され、ブームを巻き起こしていますが、職住一体の伝統的な都市住宅である京町家が、単なる商業目的で飲食や物販店舗に利用されているのが実態です。しかし一方、ストックを活かした都市再生が注目され、町家の再生・活性化を軸に、地域独自の歴史と文化を掘り起こして再創造する、新たなまちづくりが各地で展開されています。
 そこで私たちは、町家保全・再生、活性化に関する全国協議の場をもつことにしました。京町家ネットの長年にわたる活動実績やシステムを全国の仲間に伝え、各地で実りつつある示唆に富んだ多くの事例を学びあいたいと思います。それぞれの活動にフィードバックできる交流の場への参加を、京町家ネットから全国の仲間に呼びかけます。
 今回の交流会は初めての試みであり、試行錯誤を含んだまま開催されたので多くの反省点があげられると思われるが、呼びかけの主旨がどれだけ達成されたか、現時点での総括をしておきたいと考えている。まず最初に、参加者に関しては実行委員会事務局によって以下のように集計されている。

参加総人数:351名(両日参加した総人数)
参加団体数:82団体(内、発送呼びかけ団体(150団体)の参加は38団体)
1日目(6/11)参加人数:278名(内、一般参加者81名)
2日目(6/12)参加人数:232名
懇親交流会参加者:173名
分科会参加者:224名(129名、235名、348名、435名、529名、 625名、723名
(丸数字は分科会番号))

「京町家通信35号」(2004年7月1日)の〈京町家は今〉に交流会の最初の呼びかけを行なったが、そこでは規模を150~200人程度としていたので、目標は達成されたことになる。開催日間際、6月9日の京都新聞夕刊トップ記事に「町家保全、京で知恵探る」のタイトルで紹介されたことによって、一般の参加者が予想以上となった。当初から、活動団体の意見交換の場として位置付けしていたため、一般参加者への対応に不適切な点も指摘された。次回の課題の一つである。
呼びかけの主旨の通り、この交流会の目的は以下の4つであった。
(1)京町家ネットの活動を全国の仲間に知ってもらうこと。
 これは2004年6月1日発行の『季刊まちづくり第3号』の特集「町家再生の仕組みを考える」で紹介した京町家ネットの活動内容を、参加者に直接伝えることである。まず4会の代表がそれぞれの組織の特徴と活動を紹介し、シンポジウム「町家再生の光と影」で京町家ブームの実態に迫ると同時に、我われの活動がかかえる種々の問題点をも披露してその実像を明らかにした。そしてこれまでの活動成果の一端の具体的事例として、改修町家と改修工事現場を見学していただいて意見交換をした。
(2)各地の実践事例から学び、問題点を共有して考えることによって、それぞれの活動に還元していくこと。
 今回は、長、短の活動期間を持つ任意団体、地域に根ざしたNPO法人、社団法人・行政各2団体に特徴ある取り組みを紹介いただき大変参考になった。参加団体の分類から、それぞれを代表する事例が聞かれるようにしたが、時間の制限もあって十分ではなかったと思われる。次回には、発表形態を工夫して、出来る限り多くの事例が紹介されることが望まれる。
(3)町家再生が直面する7つの課題をテーマに分科会を行ない意見交換すること。
 友の会は1つのテーマに絞ったが、他の3会はそれぞれに2つのテーマを担当した。今回の分科会は、よくある分科会のように一部のパネラーの話を会場の聴衆が聞くという形をとらず、全員がテーマを共有して話をするという方法をとった。テーマによっては上手くいったところもあるが、多くはテーマを共有して話し合うという段階にまで至らず、参加者の自己紹介に終わったものもあった。全員で話し合うには人数が多過ぎたという指摘もある。
(4)町家を改修再生した飲食店舗の見学を兼ねた懇親会を行なって交流を深めること。
 京町家ネットが改修を担当したかあるいは日頃から関係の深い町家飲食店を、割烹から仏・伊料理、飲み屋まで8店舗用意し、参加者の希望通りにエントリーしてもらった。実行委員がホスト、ホステス役となって、遠来の参加者を歓迎した。我われの活動紹介が中心であった第1日は、それまで些か固い雰囲気であったが、リラックスした懇親会はムードが一変して大いに盛り上がり、交流が一層深化したようだ。他の店めぐりの二次会企画も大変好評であった。
また、これも初めての試みとして、友の会、情報センターを中心にプレイベントとして、1ヶ月にわたり町家で展開された『楽町楽家』も画期的なイベントであり、京都の新たな年中行事として定着していくものだとの評価を得たことも特記すべきであろう。
 交流会担当者として最も印象に残ったことは、当初から危惧されていたことであるが、町家再生を軸とした新しいまちづくりの担い手は我われのような市民団体ではなく行政であり、市民団体がそれであったとしても行政主導の場合が多いようだ。したがって、真の意味で交流会が活動の協議の場となるには、もう暫く時間がかかりそうである。第2回目を担当するのが他団体なのかあるいは我われが再度主催するかは未定であるが、今回の交流会を契機に活動が活性化した他の組織が名乗りをあげてくることを期待している。
 以上が概観であるが、種々の立場で参加した人達に少なからずインパクトを与えたということで、初めての試みとして我われの努力が報われたと考えている。実行委員を始めネット会員諸氏の情熱をもった真摯な取組みに心から感謝の意を表する次第である。


<京極迪宏(京町家再生研究会)>

2019.3.1