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京町家再生研究会
小島 富佐江(京町家再生研究会)

新しい門出に

あけましておめでとうございます。
みなさまにはお健やかに新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。
本年も京都町家再生研究会の活動にご協力を賜りますようお願い致します。

 昨年11月12日に新しい条例が京都市議会で可決され、11月16日に公布施行されました。「京都市京町家の保全及び継承に関する条例」です。京町家再生研究会、京町家情報センターでは一昨年からこの条例に関するシンポジウムを開催し、積極的に取組を進めてきました。ようやく町家(戦前の木造)を壊すことへの歯止めが少しかかりそうです。
 今更遅いというご意見もあるかと思いますが、ようやくここまできたという思いが私にはあります。これまではなす術も無く壊されていった町家ですが、ここからは少し立ち止まってもらい、町家をそのまま引き継いでくれる方々にお渡ししようという取組が始まります。これまで通りお住まいの方々には何の問題もなく、やむなく町家を手放さなければならない方々への条例です。家を手放すというのは大きな決断、さらに、その家が壊されてしまう。長年住み継いだ愛着のある家が跡形も無くなり、そこに詰まっていた思いも消えてしまいます。そのことを想像すれば、その重さは図ることができないと思っています。まず家を壊さないこと、次に引き継いでもらえる住まい手を探すことが、この条例の大切な役割です。その条例をどのように運用していくのか、関係者の力が試されるでしょう。私たちもその一助となり、積極的に取組に参加するつもりでおります。

 京都市役所の町家を担当する部局の部屋にNPOの机が置かれることになるようです。複数のNPOが交代でその机にすわり、市民からの相談を受けることになります。それぞれの活動には得意分野がありますが、手分けして町家の様々な相談に対応していきます。これまで民間と行政の連携は不十分でしたが、これからは隣同士に机を並べ、相談の内容を同時に受け取ることが出来るようになり、対応もそれぞれの得手不得手を考慮して進めることが可能です。1軒の家が抱える問題は多岐にわたりますが、その問題を解決しようとするとあちらの窓口、こちらの窓口といろんなところを回ることがあたりまえでしたが、これからはこのNPOの窓口に行くと、すべてについて対応してもらえます。窓口となる私たちもしっかりと勉強をして、その対応にあたりたいと思います。
 海外に行くと、その地域を担当されている専門家にお会いすることがあります。もちろん民間の方ですが、行政から権限を与えられていて、まちづくりや建築に対してきちんとした意見を持ち、指導をされている方々です。もちろん専門家の集まりです。お話を聞くにつけうらやましいと思っておりましたが、京都もいよいよ日本での魁となるのだろうかとわくわくします。週代わりでNPOが担当し、もちろんその為の直通電話もつながるようになります。

という初夢を見ました。

 いつも「連携」という言葉が空回りしているように思っていますが、この夢が実現出来れば本当の意味での「協働・連携」が可能になるでしょう。行政と対等に仕事ができる環境を作っていくことが、町家を健全に再生し、継承していくことになると考えています。その為には私たちの組織の充実も必要になります。これからますます多くの方々の知恵とご協力が必要になります。
 私たちのこれからの夢実現に向けて、昨年10月28日から京町家の設計塾「京町家の改修設計―基礎講座」が始まりました。受講生は20名、熱心なメンバーが集まり、京町家を再生するための基本的なことがらを学んでいます。年代は様々ですが、仕事や学業を持ちながら、月1回の塾に集うことへの熱気を感じています。単に設計を学ぶのではなく、真摯に町家と向きある姿勢、町家をお持ちの方、お住まいの方の心に添うという役割、美しい町家を作り上げようとする気持ちを伝えていきたいと思っています。
 京町家の評価が高まり流通も促進されましたが、お住まい、店舗、宿泊施設など使われ方は千差万別。改修もありとあらゆるものが出てきました。現代工法を当てはめた家も目立ちます。せっかくの良い町家が台無しと残念に思うことも多々ありますが、多くの町家があればそれを選ぶ人たちの目も肥えてくることでしょう。そのためにも良い町家の再生を広く知らしめることが私たちの一番の活動です。この設計塾のメンバーにその夢を託したいと思っています。皆様のご支援をよろしくお願いします。

<小島 富佐江(京町家再生研究会)>


2018.1.1