• 京町家net ホーム
  • サイトマップ
  • アクセス・お問い合わせ
京町家再生研究会
大谷孝彦

町家再生活動の取り組み課題−持続性の具体性を目指して 
 昨年(2000年)は作事組で三件の改修事例がありました。いずれも住まいであり、住み手の強い思いによって実現したものです。内二件は御自分の生まれ育った家、あと一件は新たに購入された町家の再生でした。

 今何故町家再生なのか? 今、世の中は町家ブームであるとの話を聞くことがあります。住まいとしての再生の他に店舗活用も盛んで、様々な改装デザインの事例があります。20世紀は技術の進歩、経済発展が目覚ましく、少々行き過ぎの感があり、そのために生じたかと思われる様々な弊害に対する反省から、今は持続性のある社会を求める動きがあります。地球環境の問題、エコロジー、リサイクルへの関心、そして、物より心を大切にという、人の生き方の根拠に係わる問題への関心があるように思われます。そのような状況の中で伝統的木造建築としての町家が再評価されています。それは町家における暮らし振り、木造建物、それに係わる伝統的職人技術の中に、持続性を具体的に感じることができる何かがあるからでしょう。従って町家への関心が一時的なブームなのかどうかは社会全体の大きな動きが本物であるかどうかに係わっていると思われます。

 勿論、町家再生の取り組みが本物であることが必要です。町家を使ったという物珍しさだけの評価ではだめです。町家の本質的なものを受け継いでいること。勿論、新しい感性、機能に対応できることも必要です。再生とは継承と発展が同時にあることです。言葉で言うのは簡単ですが実際にどのようにすれば良いのか。再生の実践の中でも試行錯誤を行いながら取り組んでいる所です。

 しかし、その一方で多くの町家が相変わらずとり壊されている状況があります。再生の活性化、再生活動の強化を計る必要があります。具体的にどのようにすれば良いのか。皆様の御意見を聞かせて頂きたいのですが、今、我々研究会で取り組もうとしている内容を少し整理してみたいと思います。まず、市民活動グループとして目的と手法を明確に持って、主体性のある活動を目指すことが必要です。一方で行政、他の活動グループとの連係、ネットワークも必要でしょう。大きな広がりのある活動を展開しないと町家が潰されて行く現状に対応できません。そして、ネットワーク活動への取り組み方そのものが一つの研究課題です。会としての活動をしっかりと固めてゆき、その成果をネットワーク活動の中に投影していくこと。そこで初めて強固で効果的なネットワーク活動の成果が期待できると思われます。
 我々研究会の活動は基本的には町家の居住継続、再生活用の基礎的な条件整備に対する取り組みと言えるでしょう。具体的には、

1)町家のくらしに係わる問題として
暮らしに対する意識/生活機能/税金問題/建物の維持保全の基礎知識の習得/職人さんとのネットワーク
2)再生活用に係わる問題として
町家所有者と町家を活用したい人に関する情報の収集整理と取りつなぎ/資金計画として経済基盤としての新たな職の開発/資金助成の手法
3)再生技術に係わる問題として
伝統木造建築に対する現代的生活機能、空間デザインへの建築的対応/耐震、防火など安全機能への技術的対応と法体系の整備
4)町家に係わる都市環境の問題として
採光/通風/防災/交通/町並み景観などへの対応/地域活動、地区計画の展開
 研究会においてはこれらの問題に対する具体的な取り組みとして、京町家居住研究委員会、京町家情報企画委員会、京町家再生技術委員会などいくつかの角度から、それぞれの問題に係わる研究と活動を進めて行きたいと思います。昨年からくり返し準備の打ち合わせを進めて来ましたが、年が改まり、この度、京都市景観・まちづくりセンタ−と共同で改修事例ヒアリング調査を実施することになりましたので、これを契機として具体的な取り組みを始めたいと思います。詳細の企画案を作っていきますので、会員の皆様にはそれぞれ御自分の得意とされる、あるいは興味を持たれる分野への御参加をお願い致します。また、その他の研究、活動についても当会の資金助成の用意がありますので積極的に申し出て下さることをお願い致します。