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京町家作事組
シリーズ「作事組の仕事」・その7

次代作事組検討委員会

末川 協(作事組理事)

 10年の期間限定を目処に立ち上げられた京町家作事組の活動も今8年目を迎えています。残りの2年間足らずを、今までの作事組の成果をまとめ、次のステップを切るための新しい取り組みに向かう期間とし、今春から次代作事組の検討委員会を開いています。


町家を守りつくる〜改修実践
 「町家を守り、つくる」、「技を再生し習得する」、「次代の町家を担う職方を育成する」、「保全再生を普及する」。作事組の結成と共に打ち立てられた4つの目標の大切さは8年目も変わるところがないと思われます。これらの課題に対して作事組がやり遂げたこと、やり残したこと、やり続けねばならないこと、そして次に取り組むべき課題について議論を重ねています。すべての会員による活動の評価や反省、京町家ネットの内部や、施主からの評価の汲取りに向けて準備を進めています。そのプロセスを広く公開しながら、課題の共有をはかり、活動の仕切り直しに向かう予定です。

 「町家を守り、つくる」という課題に対しては、日々の改修の実践がその成果に当たります。再生事例の量的な評価もありますし、作事組の会員職方全体が一つ一つの実践の成果と責任を自覚する部分もあります。町家を将来に「作る」取り組みをどのような戦略で展開できるのか。そこに今後の課題が見出されます。

 「技を再生し修得する」という課題に対しては、改修の実践で得た技や再生された技が、会員の個人的な技量の枠を超えて広まり、町家再生の現場の中で再び活かされています。『町家再生の技と知恵』『町家再生の創意と工夫』という二つの作法書もまとまっています。しかし資材の流通の課題や工期やコストの枠の中で技術の再生が次善の策に留まっている状況もあります。


次代の町家を似合う職方の育成〜棟梁塾
 「次代の町家を担う職方を育成する」という課題には、魁棟梁塾の試行をへて、京町家棟梁塾が開かれています。継続的な塾での価値観や技術の受け渡しを含め、この取組みも自立的に続けていけるのか、学ばれた技術はどこで活かされていくのか、作事組の活動を将来の担い手に引き継ぐ広い課題とも塾の運営はつながります。

 「保全再生を普及する」という課題には、京町家ネット全体の活動と力を合わせながら、そして自前でも勉強会や広報、講師派遣や見学受け入れを行ってきました。町家と作事組に理解ある施主との協働という前提の中で、京都に残る数万の町家に対してはたして積極的に働きかけが出来ていたのか。ここでも反省が必要です。一方、一つの再生実践が人や近隣のつながりから次の町家改修を呼び、若い住み手の意識を掘り下げ、京町家ネットの屋台骨となる人びとがその町家の住まい手から現れるような着実な実感もあります。

 手入れの必要な一つ一つの町家を前に、現場での地道で確かな実践を守りながら、その先の課題を見通す必要があります。町家の改修が一般化する中で、作事組の目指す改修が必ずしも劇的には広がらない課題。京都全体での取り組みと手をつなぐ課題。日本中での取組みと手をつなぐ課題。次の世代へ活動を引き継いでいく課題。活動を広げ、再生技術の質を担保できる継続的なシステムのためには、会員の自主的な取り組みだけでは賄いきれない部分で事業的なシナリオも必要です。


保全再生の普及〜楽町楽家での見学会
 8月には理事の間で、次代の作事組の活動に向けた意見交換が行われました。町家そのものに陽の目が当たる中、作事組が行う町家改修で守るべきことは何か。町家再生の仕事が広がれば後継者は自動的にそだってくること。客引きをせず、今までの一定評価の前提を守りながら活動をどう広げるのか。オーナーの意識への働きかけの大切さと町家のフローに踏み込む必要性。はたして仕事が増えたときにも、無理をしながらでも共通の単価を守っていく必要性。町家の新築に向けて取り組む方法論などが話し合われました。この討議をもとに作事組の活動の評価の汲み上げを、まずは会員全体に広げていきたいと思います。さらに多くの方々から忌憚のないご意見を頂きたいと願っています。


(2007.9.1)