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その6  真空管
 堀 宏道(作事組会員、電気工事)

今回は難題である。建物の改修のついでに、
「なんとか鳴るようできまへんやろか?」と頼まれたのは、
古いステレオ?蓄音機?レコードプレャーの付いたラジオ?
とりあえず電源コードをコンセントに差し込んでみる。
あー煙が出て来た!それどころか液体が漏れだしてきて、とっさにそばにあった新聞紙を広げた。危うく畳を汚すところだった。コンデンサーから出てきていた。−ダメだこりゃ!!
どこを探しても型番がない、それどころかメーカー名すら書いてない。
普通なら修理をお断りする代物。しかし作事組のポリシー「ほかすのはもったいない」
復元するとどんな音が出るのやら、それを聞いてみたかったのが本音。
こうゆう時にインターネットは役に立つ。
真空管の銘板で検索したらなんと回路図が出てきた。
−好きなやつはおるもんや。

取り出したアンプ
隅々まで掃除をした、綺麗になってやる気が出てきた。
5級スーパー。
出力管が2本あったのでステレオだと思ったが、そうではなくプッシュプルであった、懐かしい回路だ。(スピーカーは電圧でコーンを移動させて、自身のバネで戻るが、その戻る時にも電圧をかける様に設計された、文字通り押す引くのプッシュプル回路)だから低音域にハギレとパワーを発揮する。

ほこりを取って綺麗になつた。
懐かしいマジックアイも付いていた、ラジオのチューニングで
猫の目のようなメーターで最大レベルが判りやすい。
これも真空管の一種。
この緑の光線の美しさは残念ながらデジカメでは撮れない。
遠い記憶の中の緑色と一致した。
今は高価なものになっている、特にこれはMAGICEYEと文字の影があらわれ、さらにめずらしい。

マジックアイ
ターンテーブルのモーターは分解してみたが、なんと給油が出来るように軸の両端は開けられボールが1個バネ付になっていた。20年ほど前のモーターは皆無なのに、これはそれ以前の
物なのにメンテが出来るようになっていて、電圧をかけるとすんなり回り出した。静かだ!写真の厚い鉄の箱に密封されていた為だ。遮音と同時にこの重量でターンテーブルを安定させている。しかも元祖か?ダイレクトドライブ。これもメーカー型番なし。
−作った人のご苦労を感じる。

ターンテーブルのモーター分解
例のパンクした電解コンデンサーを日電に注文した。
「古くて在庫なし、制作なら1000個単位で」と言われた。−笑った。
仕方なく大阪の日本橋へ行った。
今は電気屋の小生、そうでなかった昔は好きでここへよく来た。
−懐かしかった。
南の道具屋筋のジャンク屋まで行ったが、「これはない」と言われた。−泣いた。
終わったか!?
神様 仏様 山村様!

500WV20+20MDF
となりの町内の電気屋でもないのに電気屋以上に電気に詳しい、(はっつぁん熊さん的存在の)山村さんにお助け願った。
「容量2倍を並列に2個かませ」と教えてもらう。さすが!山村様−おおきに。
念のため、この際コンデンサーを全て新品に取り替えた。(右の写真をクリックで黄色いコンデンサーが小さな茶色に変わります。)
完成したのでテストをする。この場合スイッチを入れるではなく、真空管に火を入ると言った。スピーカーがうなりだした時は−愛犬もびっくり、感動した。真空管の音は、やっぱ違う!いい音だ。

コンデンサーの取り替え
一時はノイズのないCDデジタルが良い音と思ったが、ノイズ無しを追求すると放送室となり味気ない。
コンサートホールは人のざわめき、少々のノイズもあって、臨場感となる。
この点で和室は、畳の吸音性が良く、低域がしまり、
土壁はボード壁と違い共振することもなく、適度に遮音して、吸音もする。まさにオーディオルームとして適している。
そこで聞く心地よいノイズ入りアナログ真空管の音は格別でした。

というわけで今回は
真空管のあかりを再生することが出来ました。
末川建築設計事務所
堀 工務店
N邸にて