| 「町家再生の技と知恵」を学びあい・広める会 第4回速報 |
日 時:02年9月1日
場 所:学芸出版社3階ホール
出席人数:? |
| 以下敬称略 |
| 1. 補足説明 |
町家再生研の大谷会長の開会挨拶に継いで作事組理事長梶山によって本題に入りました。
第一回に寄せられた“他に地域の町家と京町家は違うのですか”という質問に対する回答の補足として、高梁、矢掛、柳井、室積、白石及び鞆の浦の町家のOHPを示して説明がなされ、概ね以下の内容でした。
構造的には基礎のひとつ石、間半の側柱など部材が大きいということはあるが、基本は変わらない。形態的には京町家の平入りに対して妻入りが主流で、入母屋も多く、印象はいくぶん異なる。大きな違いは2階の軒の塗籠めで−これについてはこれらの地域に限らず京都周辺の丹波や大阪でも同じだが−、蔵造りのような外観であること。
また取りわけて雨が多いとも思われないのに、屋根勾配が4.5寸ないし5寸と急なこと。そして意匠についての違いはこれらの町家が防災や防犯に主眼が置かれ、意匠性はいくぶん犠牲になっていることと、併せて京町家が材の細さもあって繊細であること。
室内意匠の大きな違いは天井高が高いことで、9尺もあるものもあり、併せて床柱などの造作材のサイズも大きい。
ひととおりの説明のあと作事組副理事長の荒木さんに補足説明が求められ、以下の説明でした。
関西から西は京都の影響が強く共通するところが多い。また屋根の勾配がきついのは元は茅葺きであった名残で、6寸、7寸の勾配もある。東へは岐阜、金沢あたりまでが京都の影響が強く、それ以降は関東圏になり様式も変わる。
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| 2. 町家の各部改修 |
| 1)第1ステージ |
壁・蔵 萩野(作事組会員、(有)さくあん)
屋根・瓦・板金 光本(作事組理事、光本瓦店)
自己紹介と町家との関わりについての説明をして壁からスタートしました。
■壁
〔京壁の特徴〕
木舞下地が細く壁厚も2寸ぐらいと薄く、木舞下地は大阪の半分程である。また関東は良い土(強度のある)が少ないので漆喰が多いが、京都は土が主流である。
〔補修について〕
通常は上塗りをこそぎ落とし、塗り直しをする。中塗りや荒壁まで補修する場合は古土を再利用して新しい土と混ぜて塗ると強度が出て良い。ただし古土を使えるのは中塗りまでで上塗りは使えない。仕上げ土に不純物が入ると錆が出るなどの故障につながるからである−茶室であればそれがおもしろいと云うこともある−。壁の傷み具合の判断については勘に頼るしかない。
塗り直した上塗りがめくれていることが多くが、これは糊ごねで塗るために強度が違うという事もあるが、既に何層も塗り重ねてあって、その上にさらに重ねるために起こることもある。
〔水ごねと糊ごね〕
糊ごねは糊を入れた土壁で、糊は昔は布海苔で、今は合成樹脂を使う。布海苔は自然に抜けて持ちがよいが合成樹脂の場合は劣化すると壁の強度が落ちる。一般的に糊ごねの寿命は10年〜15年で15年以内なら上塗りを重ねることができるが、それ以上経っていたらこそげ落として塗り替えるしかない。それに比べて水ごねは戦前のものでもちゃんと残っている。もともと土に寿命はないので水ごねであれば(風化で)傷むことはない(糊ごねは5年ないし10年で塗り替えるような料理屋などの店舗用)。
基本的には水ごねが望ましい。コストがない場合は中塗りでいったん仕上げて、何年かしてから仕上げをすればよい(糊の寿命が壁の寿命にならないようにする。中塗りは土に鉄分が多く、錆が出てクレームの対象になるが、錆が出てから言い訳するのではなく初めからそういうことがあることを伝えておけば問題はない)。
〔壁の手入れ〕―会場からの質問に答える形で
土壁は拭くわけにいかず−やってみて失敗したら左官屋を呼ぶ−、漆喰は洗剤で拭いても良い。(洗剤は中性洗剤であれば台所用でも良く、きれいな雑巾を固絞りして拭く。)
〔チリ際処理・他〕−町家ではチリ墨打ちや暖簾打ちはしないのではという問いかけに対して
町家でも高級な仕事は墨打ちや暖簾打ちもする。
(土壁の下地は竹木舞が望ましいが、コスト上代用品のラスボードを使うこともある。ラスボードは厚みが7oしかないが、それでも木舞に比べると強度があるため柱際をすかして面としての剛性を上げないようにする。ラスカット(合板)などは強度が出過ぎるのでだめである。)
■屋根・瓦
〔瓦の種類〕
主屋根に使う働き巾が8寸×7寸の六四(一坪当たりの葺き枚数が64枚、以下同じ)版、下屋に使う7寸×6寸の80枚、地蔵堂に使う6寸×5寸の100枚などが一般的であり、9寸×8寸もある。
棟の熨斗は建物の大きさに合わせて、7枚、5枚、3枚と変える。鬼瓦は町家では(棟が通りから奥にあり、目立たないので)あまり気にしないが、場合によっては家紋を入れることもある。
(屋根の大きさ、目から遠い近いで瓦サイズや一文字の垂れの高さを変えて、絶妙な意匠になっていることを学ぶべき)
〔下地〕
昔は二五貫(巾2寸5分、厚み4分)をとびとび(小間返し)に打ってトントン(土居葺き、へぎ板)2寸足(働き巾)に葺いた。今は10年に一度でも雨漏りがすると怒られるので、ルーフィングを野地コンパネの下地に葺く−私の家はルーフィングは使っていないが−。
(ルーフィングは通気性を損なうので良くない。町家の小屋裏は特に通気口を設けていないが、面戸や他の隙間空風が入るし、トントン自体も通気性がある。)
ルーフィングを敷いた屋根は上がるとぶかぶかしている。特に寄せ棟の場合は逃げ場がないので、ルーフィングをめくった途端、蒸気が吹き上げる。
〔雨漏りの原因〕
町家の屋根は大黒通りと側壁間で弛みかつ流れ方向はモヤ間で弛みと屋根面がうねっている。さらに流れが10m以上あったりすると漏れやすく、かつ途中に天窓があったりすると振りわけられた水が合流して水量を増し、漏れる原因になる。また瓦は納まり上、桟の反対側が下がり、水の流れが漏れる方に寄ってしまい、一旦漏れると土が流れさらに下がりという悪循環になる。
〔屋根の重量〕−屋根は軽い方がよいのではないかという参加者の意見に対して
屋根の荷重をどうこう言うよりも2階に重いものをたくさん載せている方が良くないと思う。
(2階はもともと重いものを置く設定になっておらず、重いものは蔵や物置にしまっていた。地震で揺らされたときに軽い方がよいのは当然だが、コロニアル瓦などでは耐用年数が20年(放置した場合)であり、耐久性、防火性などで瓦に代わるものはない。阪神淡路大震災の際、北淡町の写真を見ると瓦が一枚残らず落ちてしまい屋根がむき出しになっているというようなこともある−倒壊の原因になっていない。)
■板金/土蔵
〔蔵の現状と故障〕
現在蔵はまともに使われていない。物置ならましで、何だかわからないものが詰め込んである。
(祝儀不祝儀を家でしなくなったのも蔵の利用価値がなくなった理由。しかし京都がなんべんも焼け野原になったのに貴重な美術品が残ったのは蔵のおかげ。)
蔵の瓦は本葺きが多く、飾り物も多い。
〔板金〕
腰葺きの銅板がいつから使われているのかは解らないが、絵図を見ると1600年代に銅板の樋がある。あきらかに竹樋ではない。
(腰葺きはもともとこけら葺きであった。それが銅板に変わった。:荒木)
(銅板は瓦の金属質が溶け出すのか電触が問題になり、瓦との取り合い部が早く傷む。 また大気の汚れで腐食が早く、本来10年ぐらい経たないと出ない緑青が工事中に出ることがある。チタンという方法もあるが、コストと色合いがどうかということがある。いまのところガルバリューム鋼板が代用品として無難。)
〔瓦の耐久性〕
焼いた年代によって持ちに差は無く、割れなければ100年経っても大丈夫。持ちの良し悪しは主に焼き具合によって決まる。
〔瓦の色つけ〕−本に古瓦の色つけとあるが、どういうことかという質問に対して
(どうしても)残したい瓦を使う場合、新しい瓦に色合わせするために瓦スプレーで塗る。
〔瓦のコーキング〕−瓦の隙間にコーキングをする補修を見るが、どうなのかという質問に対して
そういうことをする業者がいることは知っている。○○技研とか△△ホームなどが大手で、瓦を葺き替えるより少し安い金額で契約し、云われれば10年保証もしているようだ・・・。
(瓦屋が瓦が密着して毛細管現象を起こさないように隙間をあけて施工しているのに、その隙間を埋めて良いわけがない。またコーキングはシリコンであっても10年ともたない。)
〔漆喰の耐用年数等〕
漆喰自体が傷むことはまれで、裏の土壁に水がまわって故障につながる。水がまわるのはもっぱら瓦のせいで瓦屋さんの責任・・・瓦屋さんと協力してやっていく。
−ひび割れの補修方法は
(壁のクラックは基本的に塗り替えしかない。Vカットをしてコーキングをすることもできるが見た目にどうか、また単に補修することより原因を調査することが大事。)
京都の漆喰は大津壁の流れで京都は漆喰はヘタ。京都は土壁が主流である。
−土佐漆喰とはという質問に答えて
土佐漆喰は藁すさと消石灰を混ぜて発酵させてから塗る。糊を入れないので強い。
□質疑応答
1.水ごねと糊ごねについてもっと詳しく知りたい。
−水ごねはきめが細かくベタッとしていて、豆腐にたとえると木綿ではなく絹ごしのような感じ。いま聚楽壁と呼ばれているのは糊ごね土をまねたもの。施工性は糊ごねは良く、水ごねは難しい。糊ごねは15年ぐらいで塗り替えるお茶屋や料理屋などに向いている。
2.天窓用ガラス瓦を使うことについてはどうか
−天窓用ガラスは今は作られていない。水仕舞ではガラス瓦が良い。
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| 2)第2ステージ |
建具 荒木(作事組理事、(株)アラキ工務店)
表具−襖と腰貼り 若林(作事組会員、若林愿鴻堂)
畳 東奥(同 上、東奥畳店)
洗い・塗装 今江(同 上、(株)イマエ)
自己紹介と職種内容の説明のあと建具からスタートしました。
■建具
〔建具の吊り込み〕
関東では建具屋が建具を吊り込む(建て込む)が京都では大工が吊り込みをする。野丁場(町場仕事に対してゼネコンが請け負うコンクリートの建設工事を野丁場という)では1日に20枚も吊り込むが町場では1日に5枚程度である。
〔建具の使い回しと修理〕
町家の建具は柱間(巾)と内法(高さ)が決まっている−大黒柱のところだけ巾が異なるが−のでどこにでももっていける。ほぞは1枚ほぞは殆どなく2枚以上で框の成が高いときは4枚になる。
ほぞ穴が中ほどでくびれていて、建具ががたついてもほぞに楔を打てば締まる。今の建具は機械で作るため、ほぞ穴が真っ直ぐで楔が利かない。(今の建具はほぞを打ち抜くことがまれで、袋ほぞで糊で留めてしまうため、もともと修理ができないことが多い。)
(昔の建具は今は作られていないため稀少で)古建具(舞良戸)は成5尺7寸、一間半4枚で14万円ほどする。
一間4枚の建具は巾に対する高さの割合が1.5倍を超えるため(がたつく)修理しにくい。また紙障子の高さ調整は下桟を削ると引き手の高さが合わなくなるので上桟で調整する。框の歪みを調整するため桟の間に弓を入れるが意匠だと思われていつまでもそのままのことがある。
■表具
〔襖の修理〕
襖が古くなると組子が外れたり折れたりして、紙面が膨れたりすることがあるが、その場合は紙をめくり組子を修理する。今は桟(四周の上・下、竪桟)をボンドで止めたりする。(嵌め込みであれば修理ができるがボンドで止めると修理しにくくなる。)
昔の襖は下張りの紙を何枚も重ね張りしてから紙を貼ったが、今は1,2枚しか貼らない。
〔腰貼り〕
今は殆どしないが、昔は箒で壁をこすって傷つけないため、足元に20cm位の高さの紙を貼った茶室に貼ってある紙で、貼り方は左から張っていく。茶室では手前は白の紙で高さが9寸一枚張り、客待ちは紺色の紙で高さが9寸を二段に貼る。着物の帯で壁が傷まないようにしたものである。
■畳
〔京畳の特徴と補修〕
厚みは1寸7分(現在一般的な厚みは1寸8分)、床の側に厚さ1分の框を入れる。
床がヘタって1寸5分ぐらいになっていても床を足して元の厚みに戻せる。濡れて床が腐っていない限り補修をして再利用が可能。機械縫いのものは補修ができないが、手縫いは補修ができる。
■洗い・塗装
〔ベンガラ塗り〕
今はベンガラを塗ることも塗る人も殆どなく、オイルペンキやワビスケ(ベンガラ代用品)を塗っている。
(材料は手にはいる。練り墨を乾燥させ、ベンガラ(酸化第二鉄)と混ぜ、菜種油と併せて作る。手間がかかる。補修の際は色合わせが難しいので、菜種油と混ぜずに水で溶いて拭き塗りしてあとで菜種油を塗ると良い。:荒木)
削り洗いというのがあり、祇園の一力は3年に1回やっていて、こそげで削って洗いをかけて塗り直す。
〔柿渋塗り〕
柿渋はペットボトル1本で300円ぐらいで売っており、防蟻、防虫及び防水効果がある。
(柱の足元が水を吸って白くなったところは油を塗るか柿渋を塗る。薄めに塗って養生をして2、3階と塗り重ねるが、養生を怠って重ね塗りをすると早く黒くなるので気をつける。:荒木)
□質疑応答
1.国産の畳と中国産の畳はどこがどう違うのか。
−見かけは輸入品の方が良いし、きれいさも勝負にならないぐらい輸入品が良い。ただ輸入品は耐久性は問題で、1年ぐらいでズボンが真っ白になる程傷むことがある。それに比べて国産は最初は汚いが、2、3年するとつやが出て光ってくる。
藺草は岡山産が良く、まだ作っているものの、量がきわめて少ない。国産の8〜9割は九州の熊本産になっている。
2.建具はどんなものでも直せるのか。
−基本的には修理可能。ただ、蔵の大戸(土戸)は修理しにくいのと、内玄関につける吊り戸は戸車の部品が手に入らないので直しにくい。
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| 3)第3ステージ |
空調・換気設備 市田(作事組会員、(株)岩崎管工)
給排水衛生・ガス設備 東(作事組会員、(株)山口工業)
電気設備 堀(作事組理事、堀工務店)
自己紹介のあと給排水からスタートしました。
■給排水衛生・ガス
〔管材の変遷と修理〕
給水管はたいてい鉄管が使われていて漏水や赤水の原因になるので、やり替えになる。ちょっと前はVPで今はHIVPにやり替えている。VPのときは立ち上がりだけ鉄管を使っていたが、今はHIVPなので立ち上がりを含めて全てビニール管で施工している。
配水管は現状の殆どが土管であり、土管は継ぎ目から竹や木の根が入り込み流れを止めたり漏水の原因になる。桝もコンクリートのため木の根が入りインバート桝(底に流れの道をつけた桝)が壊れていることがある。今はVPのためそういう問題は起こらない。
(管材は給水であれば鉛管、鉄管、白ガス管(亜鉛メッキ鋼管)VLP、VP、HIVPと変わってきて、今はマンションなどではポリブデン管が使われている。排水も土管、黒ガス管、DVLP(ビニールライニング鋼管)、VPと変わってきた。これからも変わらない保証はないので、将来のやり替えが可能なように床下であれば露出、埋設部はピットや土間を割らないでも施工できるような方法を採った方が良い。)
■空調・換気設備
エアコンは現代生活に必須な設備になっている・・・。
(町家はもともと窓を開け放って風を通すことで涼を得る作りになっており、締め切ったとしても隙間だらけの町家で空調をどうするかという問題がある。)
(作事組の仕事で空調室外機が問題になったケースがあり、おはぎ屋さんの看板の真横に室外機が露出で置かれ、位置を移動して格子で隠すと入った手直しがされた。町家の外観と空調機をいかに調和させるかと入った問題もある。:大谷)
■電気
まず改修するかどうかという判断が必要。契約容量がどれだけか、どれだけの容量のケーブルが何本は入っているかをチェックする。
またケーブルの寿命がどれ位なのかということもあり、埋め込まないでできるだけ露出配線を心がける。
(町家には照明器具の配線経路がない。もともと天井に照明をつけるような意匠にもなっていない。いずれにしても設備の寿命が建物の寿命になってしまわないようにすることが大切である。)
以上で学ぶ会は終了し、今後の進め方について話し合うための世話人会への参加が要請され、閉会後1時間あまり話し合われました。
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第一回世話人会
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