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京町家作事組
■第3回 全国町家再生交流会が金沢で開催されました〈2009年〉

■第3回全国町家再生交流会の報告

 3回目迎えた全国町家再生交流会が10月16,17,18日に金沢で開かれました。アートイベント「金沢町家巡遊」も同時期に開催中、北海道から九州まで150人の参加がありました。過去2回の交流会が行われた京都から、今回はお客さん気分で参加させて頂いた報告です。

  初日は見学会でした。改修後の2軒の町家は構造改修を含めきっちりとした仕事がされており、修復に近い再生例です。下地から本物の左官工事など、工期やコストの課題を別にうらやましい仕事です。改修中の1軒は間口が半分、奥行きの1/3が切り取られた町家、市の助成を得てけなげに直し職人の工房にするプロジェクトと伺いました。RCの底版の要否や、イガミ突きの段取り、袖ウダツの追加がデザイン上必要かなど、地元の技術者といきなり本番で意見交換となりました。暮らしや生業を受け入れた町家再生の姿も次回には楽しみに訪ねたく思います。

  2日目はまず基調報告。小松からの報告では観光や文化財としてメジャーでなくとも、個別の歴史の掘り下げと熱心な地域の取り組みを知りました。金沢からの報告では、文化財、住宅政策、景観政策から指定と助成が手厚く進む中、それでも8,700軒のストックが年間200軒超で失われる状況と、個別の町家に働きかける足元の取組みの必要が語られました。この危機感の中で、5つの分科会のテーマが、住み手やオーナー、流通担当者への動機付け、新しい住み手の開拓にシフトしていたことも当然です。参加した第1分科会では「町家の住まい手にどのようにアプローチするか」がテーマ、今日の町家再生とそこでの暮らしが再びステイタスとブランドを得た地域がある一方、地域によっては救われない気持ちの住まい手を応援する必要と方策が語り合われました。

  その晩はハシゴを外されたハシゴ酒?交流会なのですからともかく交流です。3回目となると日本中に顔見知りが出来ますし、近況を語り合えます。3軒目までお付き合いくださった明るい金沢のホストは、最後にご挨拶したところ建築指導課のお役人、普通にはまず見られない人材でした。

  最終日は各分科会からの報告と全体討議が行われました。組織論や政策論、技術論も大切ですが、町家の再生実践には、個々のストックと住まい手の中に分け入り、顔と顔でつながるしか道はないことが確認されたように思います。初日の現場で意見をぶつけ合った若い金沢の設計士も「地域に入るには『おせっかい』くらいでちょうどいいのかも」と壇上で決意していました。行政主導と聞く金沢の町家再生ですが、実際の印象は少し違います。市役所に縦割りに嵌らない優秀なタスクフォースがあり、制度面の整備も進んでいますが、同じ職員が宴会の盛り上げ役に徹し、自ら町家を改修してそこに暮らし、市民活動に参画される姿、町家再生の当事者としての姿もあちこちに見受けることが出来ました。
(末川協「町並み瓦版」より転載)




■第3回全国町家再生交流会 プログラムとスケジュール
10月16日(金)  1日目
16:00〜18:00 改修現場見学会(ツアー形式)

10月17日(土)  2日目
11:00〜12:00
金沢職人大学校施設見学(自由見学)
13:00
受付開始
13:30
開会挨拶
総合司会:菊本聖子 (NPO法人金澤町家研究会幹事)
開会挨拶:川上光彦 (NPO法人金澤町家研究会理事長、金沢大学)
13:50
オリエンテーション
武藤清秀(NPO法人金澤町家研究会幹事、むとう設計(有))
14:00
<基調報告>  
事例報告 1 :小松市 山口哲央
 (こまつ町家再生アドバイザー、風土研究所)
14:20
事例報告 2 :金沢市 小林史彦
 (NPO法人金澤町家研究会幹事、金沢大学)
14:40〜15:00
<休 憩> 
15:00〜17:00 <分科会> 
分科会  詳しくはこちら >>
17:00〜18:30 <解散・移動>
18:30〜
<町家居酒屋ハシゴ交流会>
浅野川界隈にて

12月2日(日)  3日目
9:00
<まとめ>
分科会報告 各分科会担当者
10:10 全体討議
司会・まとめ:水野雅男(NPO法人金澤町家研究会理事、金沢大学)
11:30  アピール 
馬場先恵子 (NPO法人金澤町家研究会監事、金沢学院大学)
京町家ネット挨拶
11:45 町家巡遊の案内  水野雅男
11:50 閉会挨拶  
増田達男(NPO法人金澤町家研究会副理事長、金沢工業大学)
  <解 散>
午後 
町家巡遊2009(自由参加)
町家町並み見学会(ツアー形式)  案内:増田達男
(町家巡遊09については右ブログをご覧ください。 http://machiya09.exblog.jp/
 

※17日午前・午後と18日午前のプログラムは金沢市民芸術村で行います。
  金沢市大和町1-1(金沢駅から徒歩15分、タクシー5分)
※会費、資料代3千円(学生1千円)・町家居酒屋ハシゴ交流参加費4千円前後(会場により異なります)



■第3回全国町家再生交流会 分科会テーマと担当者
(1)町家住まい手に対してどのようにアプローチすべきか
【担当・進行】 本光章一(NPO法人 金澤町家研究会会員、金沢市景観政策課)
【報 告 者】 ・ 山下洋程子(こまつ町家情報バンク検討委員会委員・段捨離)
・ 柴野 昭(金澤町家居住者、町家改修経験者)
・ 山田公子(京町家友の会事務局)
【テ ー マ】 ・住み続けるための住まい手どうしの交流と支えあいの方法
 (町家を生かす住まい方、町家の楽しみ方、悩みとノウハウの共有など)
・高齢世帯の町家住まいをどう支援するか(住宅改善、継承者、住替えなど)
・住まい手に対する公的支援策として何が必要か

(2)空き町家所有者にどのようにアプローチすべきか
【担当・進行】 水野雅男(金沢大学大学院人間社会環境研究科・教授、金澤町家研究会理事)
【報 告 者】 ・松井 薫(京町家情報センター事務局長)
・北島 力(NPO法人八女町家再生応援団、八女市建設課)
【テ ー マ】 ・町家ドミトリーの提案事例の紹介
・空き町家所有者の気持ちを動かすため何が必要か
・空き町家を流通させるための契約等のノウハウ
 (定期借家、改修費用の負担と回収など)

(3)不動産業者との連携のあり方について
【担当・進行】 奥村久美子(NPO法人金澤町家研究会正会員、奥村設計室)
【報 告 者】 ・足立正之(京町家情報センターコアメンバー、テナント京都プロデュース代表)
・山田和代(金沢市住宅政策課)
・奥 隆生(有限会社E.N.N./ 金沢R不動産)
【テ ー マ】 ・町家に関心のない不動産業者さんの意識を変えるには?
・いわゆる「町家バンク」はどのような役割を担うべきか?

(4)町家住まいを希望している人は何を必要としているか
【担当・進行】 小林史彦(NPO法人金澤町家研究会幹事)
【報 告 者】 ・京極迪宏(NPO法人京町家再生研究会常任理事)
・上田琢也(NPO法人今井まちなみ再生ネットワーク理事長)
【テ ー マ】 ・町家住まい希望者が必要としている情報は何か
・町家住まい希望者のためらいを解消するには何が有効か、必要か

(5)技術者と町家修復・再生の仕事のマッチングのために何が必要か
【担当・進行】 武藤清秀(NPO法人金澤町家研究会幹事、むとう設計代表)
【報 告 者】 ・内田康博(一般社団法人 京町家作事組事務局担当理事)
・宮奥淳司(宇陀まちなみ研究会、宮奥左官工業)
・越島裕昭(工務店代表、金沢職人大学校修復専攻科修了生)
【テ ー マ】 ・町家を生かす修復・再生とは
・町家の修復・再生の技能をどのように修得するか
・志や技能を持っている技術者がそのことをどのように発信し、仕事に結びつけるか