• 京町家net ホーム
  • サイトマップ
  • アクセス・お問い合わせ
京町家再生研究会
京町家通信  vol.101

大谷孝彦さんを偲ぶ

 大谷孝彦さんの早過ぎるご逝去は残念でなりません。涙を堪え、心から哀悼の意を表します。6月7日に行われた「大谷孝彦さんを偲ぶ会」には、多くの関係者が集まり、穏やかな性格で誰からも慕われた大谷さんの面影を偲びました。それぞれが抱く思い出話に花が咲き、大谷さんの遺志を継いで、今後、京町家の保全・再生・利活用に一層の努力を重ねることを誓い合いました。

 私は、再生研創設時のメンバーではありませんが、しばらくして活動に参加させていただき、爾来、20年を超えるお付き合いで、本当にいろいろなことがありました。どなたもが不思議がられるように、大谷さんと私はその性格が殆ど真逆でしたが、なぜか強い絆で結ばれ、再生研の活動、京町家ネットの活動を共に進めてきました。

 創設後10年が過ぎ、初代会長の望月さんが勇退されることになり、次の会長を何方にお願いしようかと二人で相談し、京都大学の三村先生を口説きに行きました。しかし、先生は京都市景観・まちづくりセンター理事長になられるとのことで見事に断られました。外部からではなく幹事の中からという意見もあって、それでは大谷さんにということで、2代目会長(すぐにNPO理事長)を引き受けていただき、私は補佐として支えていくことになりました。

 京町家の保全・再生運動の理念を固く共有しながらも、具体的な活動方法については、穏健派の大谷さんと急進派(あるいは根源派)の私の考えは衝突することも多くあったのですが、実行に関しては大いに協力し合い、袂を分かつようなことはありませんでした。今になって考えれば、これも大谷さんの包容力の賜物であったと自戒しています。

 思い出は尽きませんが、大谷さんも大好きだったワインに薀蓄を傾ける会を作ることが出来なかったことが悔やまれます。お互い同年代で65歳を過ぎてから体調を崩すことが多くなり、実現できなかったことが真に残念で、悔やまれてなりません。

 私は昨秋に事業の第一線から退き、真言宗系大学に聴講生として通って佛教を本格的に学ぶことに致しました。折に触れ、大谷さんのご冥福をお祈りして、拙いものではありますがお経をあげさせいただいております。

願 以 此 功 徳  普 及 於 一 切
我 等 與 衆 生  皆 共 成 佛 道

京極迪宏(京町家再生研究会理事)