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京町家再生研究会
京町家通信  vol.100

京町家通信とともに歩んで20年

 京町家通信が100号になりました。最初は1年間の活動をまとめた冊子を発行し、5号まではその形でした。研究会発足から7年を迎えた1999年(平成11年)9月に6号目をニュースレターとして2ヶ月に1回の発行に切り替えました。6号巻頭には「ニュースレター〈発進〉」として当時の事務局担当であった大谷孝彦氏がその理由を述べておられます。『最近、町家をめぐる話題が大分慌ただしくなりました。天気概況ならぬ、町家概況を発信しなければ町家の動きについていけない状況です。当会としても密度のある情報をより速く発信するために2ヶ月に一度のペースでニュースレターを発行することにしました。』ここから4ページ(18号からは6ページ、23号から8ページが現在まで続いている)のニュースレターが発行されることになりました。1号冊子から6号ニュースレター発行には当時の編集部会担当の磯野英生氏が企画編集をされました。その後8号目から一昨年までの発行には学芸出版社の多大なご協力があり、ここまで続けてこられました。学芸出版社の皆様には大変感謝をしております。紙面を借りてお礼を申し上げます。

 冊子として発行していたときには、再生された町家を特集し、そこに関わった方々にいろんな立場から「記事」を書いていただいていました。今回この文章を書くにあたって、当初の通信を読み直して、あれこれ懐かしく思い出しました。再生された町家にお住まいの方々のお話やかかわった職人さんたちの声など、今読んでも面白いと思います。町家再生を進めていこうとする「熱」が伝わってくる冊子です。それから約20年、京町家に対する評価は大きく変わってきましたが、この「熱」は持ち続けたいと思います。

京町家通信 
1号 1995年2月1日発行 
(創刊号)橋弁慶山町会所再生計画
2号 1995年9月9日発行  
ミホプロジェクト・スタジオ計画
3号 1996年9月7日発行  
伝統的な土壁の継承と発展
4号 1997年9月7日発行  
セカンドハウス・東洞院店
5号 1998年9月7日発行  
京町家の未来像 ?京町家まちづくり調査に参加して-

 冊子のデザインについては前出の磯野氏と会員でデザイナーであった大杉泰正氏が中心になって出来上がったと記憶しています。少し変形の版で、「かっこ良く」出来ているのですが、郵送をしにくかったことを覚えています。紙の無駄がでないということでその大きさに決まったのですが、「送る」ということをあまり考えていなかったのか、封筒には苦労しました。今見直してみると、なかなかおしゃれなデザインだったと思いますが、大谷氏の書かれたように時代のスピードに合わせるために渡しやすく送りやすいことを優先しました。ニュースレターのタイトルである「京町家通信」の文字は大杉氏が王羲之の字を一文字ずつ、つなげてくださったと聞いたような気がします。そのときに大杉氏には名刺のデザインもしていただき、それは今も4つの会がそれぞれに色を変えて使っている町家の格子のデザインです。これは今も評判がよく、いろんなところで「さすが京都ですね」と言っていただけます。確か町家調査の特集が5号目で、それ以降にニュースレターという形をとり、現在に至っています。この頃には再生研究会だけでなく、作事組が出来、あわせて友の会が組織され、各会が分担をしてページを持つことになりました。その時々の各会の動きや興味、様々なことが盛り込まれています。原稿を集めるのにも苦労もありましたが、いろんな方々のご意見をうかがえることもニュースレターの良いところだと思っており、近年は4つの会のメンバー以外にお願いすることが少なくなっていますが、もう一度当初に立ち返ってご寄稿を増やすことも考えたいと思っております。

 ニュースレター6号の1ページ目に大谷氏と並んで当時の会長望月秀祐氏が文章を寄せられています。この締めくくりの文章をもう一度掲載し、京町家再生の活動の礎にしたいと思います。

 「京都を訪れる多くの人々は、日本の住宅の原点である京町家が美しく建ち並ぶ町並みを見ることを望んでおり、美しい町並みの再生は市民の責任でもあります。

 私たちの研究会は、まず民による活動実績をつくり、つづいて官の支援や施策を誘致することを狙っています。私たちの手で〈町家都市京都〉の実現を図りましょう。会員の皆さん、これからもその手で会を支えてください。」

 前理事長大谷孝彦氏が今年の4月4日にお亡くなりになりました。とても残念で寂しい思いで一杯です。冊子、ニュースレターの編集に大谷さんがとても熱心に取り組んでくださっていたことも思い出となってしまいました。編集が進まないときに大谷さんのお宅に皆がお邪魔してバーベキューを囲みながら、花火を眺め、特集記事について議論をしていたことも楽しい思い出の一つです。ご冥福をお祈り致します。

 合掌。


初期の京町家通信

小島 冨佐江 <京町家再生研究会>