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京町家作事組
作事組の職人さん・その31

ガス工事

(尾崎ガス住宅設備株式会社)
 昨年作事組に入会され、ガス工事を担当していただいている尾崎ガス住宅設備の代表取締役・尾崎明さんにお話しをお伺いしました。

――家業について教えてください
 昭和3年5月に、兵庫県の浜坂から京都へ出た祖父が、個人で木製の風呂の製造販売を始めました。木曽から檜(ひのき)や椹(さわら)や槇(まき)の原木を仕入れ、帯鋸で加工して。当時は木製かタイルのお風呂しかありませんでしたが、そのうちにポリ風呂が出てきて、木の風呂は衰退しました。一時ポリ風呂も作ったようですが、そのうちに製造の仕事からは離れ、大阪ガスの傘下に入り風呂ショップとなり、公団の家などに風呂を販売・設置する仕事をしていました。昭和25年3月18日に法人化し、尾崎桶木槽工業株式会社となりました。そして昭和55年5月には現在の尾崎ガス住宅設備となりました。
 その間、祖父から父、父から兄に代替わりし、昨年10月には私が兄から会社を引き継ぎました。私ははじめ家業とはまったく関係なく証券会社に就職しましたが、入社2年目に祖父が亡くなり、後を継いだ父から会社に入らないかと誘われました。思うところもあり、つとめていた証券会社をやめて入社しました。

――どのようにガス工事の仕事をおぼえていかれたのですか
 ガス工事やガス器具については大阪ガスの研修施設に行き、資格を取ればできるようになります。いくつかコースがあり、私は営業畑なので設計、販売コースへ行きました。

――ガス工事で気を使うところ
 建物の全面解体の場合ガス管を側溝付近で切断する工事は大阪ガスに連絡しガスを止めてもらうのですが、リフォーム工事の場合ガスメータの移設等でガスを止められない場合一番気を使います。生ガスが噴出しないようにバッグをかぶせる等の手順が必要となってきます。また、圧力計算をして許容圧力損失のなかで工事が出来ない場合はガス管のサイズアップが必要となり場合によっては供給管からの引き替えが必要になってきます。
 ガス屋は解体現場を見に行くことからはじまり、仕上げのガス器具設置から開栓まで、工事期間全体をとおして工事にかかわっていくことが多いです。工務店さんによって、監督さんによっても建築行程が違いますから、自分なりにどのタイミングで入れば良いかを現場ごとに意識して動いています。

――町家改修では
 古い設備ではガスコックが回らなかったり、鉄管が腐食していたりといったことがあります。工事前に圧力テストをして問題がある場合、大阪ガスの指令室に連絡し、どこが漏れているかその箇所を検知してもらいます。ガス管が腐食等で漏えいしていれば上流から引換えます。いまの地中配管はポリエチレン配管になっていて耐久性があります。

――ガス工事以外の仕事と電力自由化について
 温水を利用した床暖房、暖房乾燥機、住宅設備機器全般を取り扱っています。工務店さんへの卸です。床暖房にも電気式とガスがありますが、ガスの方があたたまりが早いし、低温やけどをしにくいという利点があります。
 2016年4月から電力自由化が本格化して、通信とセットで電気を売る業者があるように、大阪ガスもガスとセットで電気を売るようになると、ガスがよいとばかり言わなくなるでしょうね。いま電力申込みの新しい書類がどっさり届いていて、対応に追われているところですが、新築の場合、関西では関電と大阪ガスのどちらかを選ぶ作業が増えるでしょう。
 CO2の排出量を考えれば火力発電は天然ガスでも排出されます。風力や太陽光も不安定な現状では、原発を動かさざるをえないと思う。中国の海洋進出。シーレーンの不安を考えると最先端の日本の技術力を駆使し安全性をさらに高め原発を動かした方がよいと個人的には思います。日本の技術力を信じたいです。

――仕事の要諦
 一日の半分くらいは現場と営業の外回りです。大まかにいうと、物を売ること、施工すること、そして経理業務の3つが必要ですが、このなかでひとつ得意分野をもち、あとの二つもおろそかにしないことが大切かと思います。
 また、お客様のことを考えるというのではだめで、お客様の立場にたってお客様の目線で見ないと選んでもらえない。できるだけ建築屋さんの立場に立って考えながら仕事をするよう心がけています。
 休日は本も読みたいです。何かが足りなくて失敗したとして、その何かが読もうとして読まなかった本に書かれていたりするものです。いい本は何度も読まないといけませんね。

***

 実直なお人柄で、頼まれたら他の人の分まで引き受けてしまうような大変良心的な方ではないかなと思いました。

会社メモ
尾崎ガス住宅設備株式会社
京都市伏見区上神泉苑町810

聞き手:森珠恵(作事組事務局)

(2016.3.1)