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京町家作事組
作事組の職人さん・その3

大工職人(2)

(山内茂さん/山内工務店)
 シリーズ三回目となる今回は、作事組の副理事長であり、山内工務店 代表取締役社長の山内茂さんにお話を伺います。
茂待軒のおくどさん
茂待軒のおくどさん

 ――山内工務店は今年創業50周年という節目の年を迎えられるそうですが、振り返ってどんなことを感じておられますか。
 私は大工だった父を見て育ち、幼い頃から家で大工仕事をしていました。大工仕事が好きで、中学を卒業する頃には大体のことはできるようになっていました。だから経営者である以前に、親しみやすい「大工さん」でありたいと思ってこれまでやってきました。
 18歳で独立して四畳半一間から始め、創業当初は自衛隊の営繕の仕事などもしていました。紹介で顧客を広げ、30代で10人ほど職人を抱えるようになっていました。営業や現場監督の仕事が多くなり、36歳で大工仕事から離れました。仕事を欠かさないことが第一ですから、どこよりも安く、速く、いい仕事をして喜んでもらうことを目標にしています。うちの職人の朝は早いですよ。現場の清掃もきびしく指導しています。そのぶん一人ひとりの仕事ぶりをよくみて手当をつけます。毎月私が手渡しするようにしています。
 先日あるお施主さんに「30年続いたら老舗。一代で50年続いているのはえらい」と褒めていただいて、うれしかったですね。

――後継ぎはいらっしゃるのでしょうか。
 38歳になる三男が専務を務めています。もともとは料理の道を志していたのですが、皮膚が弱く、断念しました。大工の道へ入ったのは22歳のとき、丁稚からはじめて現場で修業しました。社長の息子ということで周りもむずかしかったと思います。

茂待軒
茂待軒

――作事組のお施主様や設計者にどんなことを希望しますか。
 特に町家の改修工事は予算があまりないことも多いのですが、お施主さんも設計者も当然いいものをつくりたいと思いますよね。だから作事組の仕事はほとんど赤字覚悟で、いい材料も使います。現場の技術面については一日の長がありますから、若い人と一緒にやって、もっと伸ばしてあげたいと思います。

――町家の暮らしを体験できる茂待軒という施設を運営されていますが、普段どのような方に利用されていますか。
 一昨年に入手した家のサッシとガレージを潰して出格子をつけ、可動式のおくどさんを入れました。町家に住みたいと考えている人が、町家のよさを実感できる場になればと思っています。茂待軒に一週間ほど滞在して町家の購入を決めたお施主さんが何人かいらっしゃいます。同志社大学プロジェクト科目の学生さんも体験宿泊で利用され、たいへん喜んでもらいました。時にはワインなどを持ち寄って食事を楽しむこともあります。おくどさんで炊いておこげをつけたご飯も好評です。

――これからどんな仕事をしてみたいですか。
 700から800軒の得意先の要望なら、町家でも新築でもビルでもマンションでも何でも応えられるようにしたいです。創業50周年を機に世代交代を進める予定ですが、まだ息子には任せられない。しっかりと成長を見守りたいと思っています。
〈聞き手・森珠恵(作事組事務局)〉

※会社メモ:株式会社山内工務店/社員14名(うち大工11名)。 1960年創業。
本社所在地 京都市中京区壬生寺花井町22番の6

(2010.1.1)