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京町家作事組



◎第五期京町家棟梁塾たより 16



棟梁塾実習19「茶室『清心庵』見学」

棟梁塾実習19「茶室『清心庵』見学」」

棟梁塾実習20「いけばな実習」六角堂

棟梁塾実習20「いけばな実習」
2月報告  2月は荒木塾長の講義『茶室・数寄屋』と『日本各地の民家』があった。 茶室で何が行われてきたのかと考えながら茶室の変遷を見れば、広さや方角、窓の有無、窓の位置、形式、形状などをいかに効果的に配するか、人間の関係と自然との接し方にまつわる日本建築の設計思想がみえてくるような気がして興味深い。基本的な要素をおさえ、歴史的な意匠を学び、以前より身近に感じられるようになったと思う。茶室は元々必需品ではなく半端な材を使って建てる草庵でよかったが、今では大仰なものとなり敷居の高いもののようになっているというお話しもあった。数寄屋に使う一般的な材料についても対照的に学ぶことができた。また能舞台は特殊な装置であり、足の衝撃吸収と踏音反響のため床板は大引きの上に置くだけで、床下には壺を置くという。手近なものを使って音をつくる人の発想は意外性があって面白い。『日本各地の民家』では、地域の風土と生業によって形成された民家の特徴を概観したのち、京町家の環境性能を振り返った。合掌造りの集落で有名な白川村などとは違って、京都など比較的穏やかな気候のもとでは風土に規定される度合が少ないため、町並の均質性や家内で営まれる暮らしの知恵を受け継いでいくためには、より細やかでかつ大局的な合理性をみずから見出していく必要がある。町家の優れた点をひとつひとつ取り上げていく塾長の京町家への篤い信頼に後押しされ、講義のなかで言い尽くされないことを疑問に思って調べているとつい仕事を忘れ時間を忘れる。実習では関西セミナーハウスの茶室「清心庵」と能舞台「豊響殿」、曼殊院茶室「八窓軒」を見学した。暗がりの空間からはじまり、室内と庭の交感に心を砕いて、好み物が考案されてきた歴史が都市住宅の制約から離れたところにあって新鮮に感じられた。


第5期棟梁塾修了式の記念写真(17/3/15)
3月報告  3月1日は京都市の町家にかかわる4つの補助事業制度について各課担当係長からご説明いただきました。1.空き家活用・流通支援(まち再生・創造推進室) 2.景観重要建造物、歴史的風致形成建造物の指定制度 3.歴史的な建造物等の修理・修景に関する助成制度(2.3.とも景観政策課) 4.まちの匠の知恵を活かした京都型耐震リフォーム支援(建築安全推進課)の制度は、市民の皆さんの声を受け年々拡充がはかられている。しかし薄く広く行き渡るように考えられた4番目の制度において平成28年度の申請件数は想定を下回り、予算の3分の2ほどしか使われていないということでした。空家の流通促進をはかりつつ、歴史的な町並みを再生していくという難事業に、よりいっそう多くの人々の意識が向けられ理解が得られるように、町家の解体事前届出を義務化する新しい条例の枠組みが固まってきたという話も聞きます。こうした制度の動きにも関心をもっておきたいところです。3月12日は池坊会館で六角堂といけばな資料館の拝観、池坊短期大学専任講師の藤井真先生の講演といけばな実習がありました。六角堂ではいけばなを朝夕風通しよくお供えするのが毎日のことで、華道家元の教えは、枯れた枝も、花の後姿もいかされるすべてを包み込む家のような懐の深さをもった道であると教えて頂きました。また初期のいけばなにて一枝一枝にこめられた願いが昇華され、花伝書によって現在に伝えられていることが珍しく、生命の儚さとは別の強度をもった心の表現であることを学びました。3月15日には再生研究会理事長の小島さんが、戦後から高度成長期の社会の変化とそれに伴う暮らしの変化を踏まえつつ、戦前木造の家の雰囲気や特徴を維持していく技量について、施主の好みに対する技術以前の凛然とした感応力を語られました。1年5か月の課程を修了した塾生の皆さんは、今後さらに経験を積み、技量を向上していける機会が広がっていますので、ますますのご活躍を期待しております。

(作事組事務局 森珠恵)