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京町家作事組



◎第五期京町家棟梁塾たより 10



秦家住宅 棟梁塾実習11「庭見学」

紫織庵 棟梁塾実習11

棟梁塾座学15「茶の湯の用語と作法」

棟梁塾座学12「畳寸法、納まり・・・」
 9月7日の庭見学では、太子山町の秦家住宅を訪ねました。玄関に槿が一輪美しく咲いていました。棟梁塾OBの松浦先生の解説で、坪庭と前栽を構成する要素をひとつずつ確かめていきました。ミセ、茶の間、中の間に囲まれた北側の坪庭には山茶花、棕櫚竹など陰樹があり、鞍馬石、那智黒石が敷かれ、萩の鉄砲垣がアクセントになっています。お座敷へ移り、涼やかなレモンの寒天とお茶をいただきながら、秦めぐみさんからお庭にまつわるお話をお聞かせいただきました。最奥に目隠しのアラカシ、葉陰に枝折戸がみえます。六尺の据え置き型の春日燈籠と築山、10年前に植えられたいろはもみじが後景にあり、シラカシをはさんで前景に50年になる枝垂れ紅葉、右手の渡り廊下のそばに棗の手水鉢が置かれ、黒文字の袖垣の脇に川石が置かれている。左手の深い降りつくばいの周りには車輪梅、一つ葉、クチナシ、ツワブキ、スナゴケ、スギゴケが植えられています。毎年6月に新緑が伸びきったころ、祇園祭の前に植木屋さんが来てお手入れされている。降りつくばいは数年に一度お掃除されるそうですが、この頃は排水が追い付かないほどの集中豪雨がまれにあり、気がかりであるということでした。その後、三条町の紫織庵(川崎家住宅)を訪ねました。お庭を背にした川崎氏のお話しは、約240坪の敷地に建てられた建物の由緒から、祇園祭・屏風祭の来場者数1000人、年間見学者数2万人、年間2000万円という建物の維持管理費(週に2度のガラス磨き、年4回庭師と大工のお手入れ、固定資産税400万円など)、友禅染の技術継承(染色家の平均年齢65歳)、町家の消失、眺望景観の喪失に及び、お庭のみならず総合的な学びの機会となりました。
 
 17日の茶の湯の座学は松井先生よりお茶の歴史、精神、茶室、作法について学びました。町家の奥行きの深いところで季節にあわせた趣向を凝らし、自然が求めている時間を何か楽しんでいる。無心になってお茶をいただくと不思議にインプットされるものがあり、しんとした自分の時間をもち、気持をしずめ、実はここ一番で力を出せる訓練をしているということのようです、楽しみながら。
 
 28日は東奥畳店で畳床や畳表、縁、それらを切る包丁や縫う道具などを見せていただき、最高の床の重み、手縫いのピッチが狭くきれいで、谷のへこみがないこと等を確かめました。昭和10年代の価格はいまの10分の1くらいで夷川通や万寿寺通で古くていい畳を売っていたそうです。見習いが最初にする花ござのからくりくくり体験、難しい寸法の差を調整する計算法、框と縁の強さを考えた厚み調整など、手の速さと細やかな技術が要求される仕事と思われます。

(作事組事務局 森珠恵)