<第4回までの開催報告> 会場:京都市景観・まちづくりセンター ワークショップルーム1・2 ●参加動機(事前アンケートから) 町家が失われていくというニュースに心を痛め、どうにかできないものか、という問題意識を抱え、何かしらの解決の糸口を見出そうとしている方が多く見受けられました。中には「町家保存に関する問題は多くの分野にまたがり、そして複雑なもの。適切に対処して町家を後世に伝える手助けができればと感じる」という、高い志を持った町家居住者の方や、町家改修の現場に携わる若手職方や設計士さん、また、大学で住居学等を専攻し、「伝統住居の中でお住まいの人々の暮らしについてや想いなどを知りたい」という若い学生の参加もありました。 ●今までの公開ミーティング(※文中敬称略)
コーディネーター:高林素樹 パネリスト:大井市郎・市古和弘・秦めぐみ・小針剛 町家居住者を中心に、日頃の生活の視点から「町家の暮らし方と快適性」をテーマとして話題提供をしていただいた。町家をきっかけとしたまちづくりや、新たな住まい手を得て、地域コミュニケーションまでもを再生させた好例を紹介。町家とは単なる箱ではなく、多様性を持った柔軟性を持ち、人の価値観にまで影響力を持つものであるということに、皆が頷いていた。 ○ディスカッション 参加者一人一人に町家に関する意見・想いなどを述べていただいた。そこではやはり町家の減少による危機的状況を憂いでいるという声や、町家というのは大変素晴らしいものであるという声が多く上がり、皆が町家の良さを改めて再確認する時間となったと思われる。 参加者アンケートから: 「京町家居住者の生の声が聞けてよかった。自然との関わりを前向きに楽しんでおられる様子を聞き、頼もしく思った」 「快適性は人それぞれ、ということが興味深かった」 「《現代建築は人間にとっての住みやすさの追及で、町家は使いこなす中で個性を出し、そこから個々の住み良さを作り出す》という話がとても印象に残った」 「難しい問題だが、いろいろな面からの議論に今後も期待する」 「学生などの若年層や、今町家に住んでいない人の取り込みが今後最も重要だと思われる。住人へのアプローチをもっと行う方法はないのか」
○レクチャー 「実大振動実験でわかった町家の強さと改良点」 講師:奥田辰雄 「防火的な町家をつくる」 講師:安井昇 地震と火災に対する町家の備えについてレクチャーいただいた。三木市のE−ディフェンスでの町家の振動実験の映像、木壁や木格子が延焼を遅らせること、土壁の遮熱性能を実証する実験の様子など、興味深い内容となった。 スライドと実際の実験の映像は大変説得力があり、参加者の皆さんの印象に残った模様。 ○パネルディスカッション コーディネーター:木村忠紀 パネリスト:木下龍一、小針剛、奥田、安井 会場よりいくつかの質問を受け、町家を構造的に研究するうえでの視点から、町家の良さを評価、より共通理解を深めることができた。 また、実際に町家での火災を目の当たりにした小針氏が、その時の体験談を克明に紹介。日常的な地域コミュニケーションが災害時にいかに役に立つかというお話に、会場の皆さんは熱心に耳を傾けていた。 参加者アンケートから: 「研究と実体験の双方からのお話を聞くことができ、大学の講義では聞けない貴重な話で大変参考になった」 「回を追うごとに内容が充実してきた。今後も引き続き参加したい」 「地域コミュニケーションの重要性を感じた」 「京町家の住環境をよりよいものにしながら、楽しんで住み続けていきたい」
○レクチャー 「町家直しの技〜改修現場に見る〜」 コメンテーター:木下龍一 「技の継承〜大工という道〜」 コメンテーター:荒木正亘 「京町家棟梁塾の試み〜若手職方の育成〜」 コメンテーター:末川協 設計士の木下氏からは実際の改修工事の事例をスライドを用いて解説いただいた。 大工の棟梁である荒木氏からは、住み込みで丁稚に出て修業したころから、独立して店を継ぐまでの経緯、その時代においての徒弟制、大工としての在り方の今昔についてのお話をいただいた。 最後に末川氏から京町家作事組が運営する「棟梁塾」の試みをスライドを用いて説明いただいた。 ○パネルディスカッション コーディネーター:堀栄二 参加いただいた様々な専門職の職方さん、設計士の方を中心に、ざっくばらんなお話が展開された。 参加者アンケートから: 「普段接することの少ない職人さん達の生の声を聞くことができた。町家に興味を持っている人は多いが、接する機会が少なく、アプローチの仕方がわからないまま、町家から離れていっている気がする。今回のような機会をもっと増やせば、そういう人たちを引きつけていくことができるだろう」 「町家を取り巻く状況の変化に憂いや戸惑いがある一方で、よりよいものを構築しようとする普遍的なプロフェッショナルの熱意や使命感を感じた」 「若い職人さんが頑張っている状況を知り、頼もしく思えた」 「職人というとどの業種の人もだいたい同じような考えの方たちだと勝手に思い込んでいた。それぞれに違う視点を持っていて、だからこそ相互の連携が必要なのだと思った。そしてこれは職人さんに限らず、町家に関わるあらゆる人に言えることだと思った」
○レクチャー 「町家を巡る法規の状況」 コメンテーター:末川協 「西欧での歴史的都市遺産保全の理念と取り組み」 コメンテーター:木下龍一 「町家の耐震、防火性能評価の動向」 コメンテーター:木村忠紀 町家は技術的に建てられる。それを広く認識してもらい、実行に移すにはどうしたらよいかを、現在の町家のおかれている状況を踏まえて三者の見解を述べていただいた。 末川氏は現在の建築基準法にとって町家は「既存不適格」と位置付けられている状況、そして現行法規の状況と問題点を解説。 次に欧州での実践の経験もお持ちの木下氏は、イギリス・フランス・ベルギーの各地方都市を中心とした、建築の保全・再生の取り組みを紹介。 最後に木村工務店の木村氏より、さまざまな実験により、町家の耐力度を解析する試みについて解説いただいた。 ○パネルディスカッション コーディネーター:梶山秀一郎 パネラー:市古(姉小路界わいを考える会)、大西(梅津まちづくり委員会)・末川・木下・木村 作り手、住み手が円卓を囲み、ざっくばらんにお話が展開された。 まちづくり運動に関わるお二方からは、町家に限らずとも、「町並みを統一しよう」というだけのことであるという切実な願いが提示された。市民を動かすには、建築の専門家がもっと声をあげて欲しいという要望も出された。 作り手の立場からは、「町家風」ができることの不安と憤りはあるが、しかしながら単なる保存だけの目的では、町家は残らないとだろうという予測も挙げられ、現在の町家の良さが、感覚だけでなく、物質的に見直され、国全体として認められることが、保存と再生、そして新築に向けての大きな一歩につながるだろうという見解も出された。 参加者アンケートから: 「こういったシンポジウムには今までも何度か参加しており、いつも前に進まない問題と感じていた。しかしこの企画は前進していきそうな手応えを感じた」 「町家を守るためにできることを、自分で積極的に探していかなければいけないと思った」 「市民運動レベルで何かできることをもっと話し合えればなおよかった。住まい手も勉強しなければいけないことは多いと感じるが、研究者と住み手との間に若干の壁があるようにも思う。自分の生活が目先の問題であって、町家の再生にまで気が回っていない住まい手は多い。住まい手と研究者がより歩み寄って、状況が変わっていくことを望む」 |
