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京町家作事組
第96号(2015年9月)

◎8月の報告

7日(金) 理事会
9日(日) 豊田みよし地理学会見学来訪
23日(日) 地蔵盆
28日(金) 理事会
30日(日) 京町家再生セミナー
「町家の維持管理と傷みの早期発見、庭の手入れと楽しみ方」

◎9月の予定

11日(金) 理事会
14日(月) 久美浜建設協同組合 現場見学来訪
19日(土) 市川邸改修工事中見学会
25日(金) 理事会


地蔵盆


地蔵盆

地蔵盆 数珠回し
 8月23日(日)は釜座町町内会の地蔵盆の催しがありました。ご町内総出で手際よくお地蔵様を祭壇に祀り、表に提灯が飾り付けられました。法界寺の住職から、学業成就、交通安全、商売繁盛などのご祈祷と、いつも見守ってくださっているお地蔵様への感謝、暑い夏を無事乗り越えられたことに感謝しましょうというお話しがありました。それから車座になって数珠回しを行いました。続いて夏らしく桶に水をはってスーパーボールすくいを少し。そして目玉のビンゴ大会。通常なら予算を超えてしまうような豪華賞品を町内会長さんが特別に調達してくださったとか。あっちもこっちもリーチリーチで最後のビンゴがなかなか出ないもどかしさ。作事組のビンゴは最後まで出ませんでした。が、子供さんが2人とも見事当選、それぞれマッサージ機と双眼鏡をゲットしていたのが微笑ましい光景でした。
(作事組事務局 森珠恵)


見学者来訪


豊田みよし地理学会の皆様
 8月9日(日)午後2時半、豊田みよし地理学会御一行様が釜座町町家にお越しくださいました。総勢39名。愛知教育大学地理学科の学生さんとOBの方々で、ほとんどが将来地理の教諭になられるか現職の先生方です。大阪市立大学の藤塚先生の案内で京都と大阪を二日かけて巡る野外実験(通称、巡検というのだそうです)のひとこまです。京都では琵琶湖疎水、南禅寺を見学されたあと、釜座町町家にて記録映像『修復の記録』をご覧いただきました。若手の先生が2階座敷から前栽を見下ろす光景に声を上げる場面もありました。女子学生さんたちは縁側で前栽を眺めながらお話しに花を咲かせ、心地よい風に吹かれ出立の時間には名残惜しそうにしていました。暑さの中にも涼を感じていただけたようです。その後は大型町家が並ぶ新町通りを下がり、旧明倫小学校などを訪ねるというコースで、京都らしい景観のなかに地域の成り立ちや特色を読み取っていただけたのではないでしょうか。
(作事組事務局 森珠恵)


京町家再生セミナー


応接間

2階座敷

賀茂七石

前栽
8月30日(日)らくたび京町家(旧村西家住宅)にて作事組の大下尚平さんと木村孝雄さんが「町家の維持管理と傷みの早期発見、庭の手入れと楽しみ方」というテーマで景観まちづくり大学のセミナー講師を務められました。2012年に旧村西邸の改修工事を担当した大工の大下さんから、風土に寄り添うようにつくられた町家との付き合い方、自然素材が永らえる環境づくりには通気・換気を旨とすることが語られました。非常に傷みの激しい井戸廻りから、瓦と板金の取り合いにみる屋根廻りの小さな傷みのサインまで、いくつかの改修事例を写真で概観した後、50年〜100年に一度のオーバーホールを見据えたお手入れを適切に行っていくために住み手とお出入り大工の関係を保っていきたいという熱意のこもった呼びかけがありました。どんなに傷みの激しい場合でも町家は素地をいかしてなおせますが、傷みの浅いうちに屋根や構造、蟻害、設備の部分的な手入れをしておくことが肝要です。また、将来元のかたちに戻すことを考えて、間取り変更、柱の抜き替え、梁の架け替えはできるだけしない、仕事の痕を残さないのが町家大工の心得と締め括りました。
 続いて造園家の木村さんは、まず町家の庭とは何かを問い、その成り立ちは江戸時代の茶の湯の大衆化に端を発し、露地をもとに明治末年頃に作られた庭の名残であることを丁寧に説明なさいました。庭は自然に非ず。しかし十年放置すると自然にかえります。町家の改修工事に伴い依頼を受けて現場へ行くと、庭を前にして茫然とするようなことも多いそうですが、百年前の京都の商家の華やかな雰囲気を再現したいという闘志が徐々にわいてくるそうです。そんな町家の庭から京都の地の自然のもの、石工の盛んであった北白川や、賀茂の七石を偲ばせる一杯のいい材料がでてくるといいます。植物については限られたスペースに厳しい条件下で維持していく必要があり、何十年にもわたって管理できることが選定の条件となります。配置も考慮が必要で、たとえば杉苔は日向を好みますがそうでない苔もあります。水やり三年といわれますように、日常の庭の水やりでも注意しなければならないことがあります。木を甘やかしてはいけないとするのが基本の教えで、乾燥に耐える強い木に育てることが大切ですし、夏、カラカラになった日中に水をやっては熱湯をかけるようなものですから、夕方に水をやるのがよいということでした。人間より大きな灯篭のある庭を背景に講義を聴き、町家の庭が多く失われたいまでは不可能な夢―上空から鳥の目で見たとき世界に類を見ない庭園都市がモザイク状に広がっている―そんなありし日の夢にのがれる時間も日常のお手入れを行う心の糧となるように思います
(作事組事務局 森珠恵)

工事実績: 218件
相談件数: 594件
('99年〜'15年8月31日現在累計)