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京町家作事組
第87号(2014年12月)

◎11月の報告

1日(土) 京町家再生セミナー「修復から学ぶ町家のつくり」
14日(金) 理事会
15日(土) 京町家再生セミナー「町家改修の進め方」
21日(金) 川越都市景観シンポジウム
28日(金) 理事会

◎12月の予定

7日(日) 改修工事中現場見学会
12日(金) 理事会
21日(日) 作事組・棟梁塾冬期研修会
事務局は12月27日(土)から1月7日(水)までお休みをいただきます。

[京町家再生セミナー]


秋の庭
 赤く色づいた庭のもみじが雨で葉を落とし地面を鮮やかに彩っていたのも束の間、冬の訪れとともに剪定され庭全体が端正な面持ちとなりました。先日も釜座町町家にはすばらしい来客があったばかりですが、御釜師の家が続く町にあって、座敷から庭をながめ落ち着ける空間として、「古都に息づく利休の心」と題したBS朝日の番組で椎名桔平さんに紹介していただきました。

「修復から学ぶ町家のつくり」

二階座敷から庭をみる
 11月は京都市景観まちづくりセンター主催の京町家再生セミナーで木下理事長と内田理事がそれぞれ「修復から学ぶ町家のつくり」と「暮らしの文化を継承する改修計画」という題で講演をさせていただきました。 「修復から学ぶ町家のつくり」は釜座町町家で行われ、新町通りにおける町並みの発生、釜座町町家活用の歴史的経緯が語り起こされ、築130年の町家に施された改造や20年の寿命しかない現代設備をいかに美観を損ねず構造体から独立させて入れるかといった工夫が紹介されました。町家を活用したまちづくりの意識が日々醸成され高まるなか、この場所で実物や模型に触れながら講師と30名の聴衆との活発な質疑応答が交わされました。

 京都市景観まちづくりセンターで行われた「暮らしの文化を継承する改修計画」では、5軒の事例をとおして、昔の暮らしそのままではないけれど、それを損なわずに文化の厚みに親しめるような改修の作法が説かれました。井戸やおくどさんを整えてその風情を楽しみ、また床が貼られていた火袋をもとにもどす一方で、寒さに備えてガラス戸一枚だったところに紙の障子を入れるなど、快適性や装飾性を重ね暮らす工夫が紹介されました。また両側の町並みが揃っていて歪みも傷みもほとんどなかった長屋の一軒に対して、窓にベニヤやトタンが貼られていたり、防火のため外壁にモルタルが塗られていた家では内側に湿気が溜まってシロアリの害がみられたということです。そうした場合には防湿シートを用いるなどして除湿し通風を確保すれば蟻害もおさまり、構造改修を行えば歪みや傾きも直ります。不陸も3cm程度ならば壁を傷めず揚げ前できるとのことでした。
 まちづくりセンターとの連携が深まっている証でしょうか、今年度は11月末時点ですでに例年の年間実績を上回る数のご相談をいただいております。
(作事組事務局 森珠恵)


[全国町家再生交流会 川越大会に向けて]


蔵造りの町並み

景観シンポジウム
 先月、宮津で開かれた作事組全国協議会に参加した「川越蔵の会」のメンバーが、平成28年1月に全国町並再生交流会を埼玉県川越市で開催すると宣言した。その後、私が先月21日、当市で催された「都市景観シンポジウム」に招かれ、初めて武蔵野の小江戸「かわごえ城下町」を訪れた。今年7月川越市は、景観法に基づく景観計画を策定して、既に江戸、明治期の蔵造りの町並保全や、歴史的街路整備、大正昭和の商店街活性化の実績に加え、武蔵野の自然や、田園風景、そして都市住民の住環境まで視野に入れた、総合的景観政策を住民参加で推進しようとしている。川越市の人口は約35万人、東京池袋から30分の距離にあり、首都圏のベッドタウンとしても便利な位置にありながら、江戸時代の城下町の地割を残し、都市周辺の神社仏閣が存続する豊かな歴史遺産都市である。

 パネラーは3名。全国的なまちづくり雑誌編集者の八(は)甫(っぽう)谷(や)那(くに)明(あき)氏と、大阪大学で都市計画を研究する小浦久子先生と私である。八甫谷氏が、住民主体のまちづくりであるべき主題をとうとうとしゃべり、小浦さんから、全国の景観計画の推進状況と評価方法等について解説され、私は、京都の町家調査から京町家ネットによる町家再生運動と、釜座町家の利活用等、平成6年新景観政策前後の活動を報告した。その中で小浦さんから「京都のゆううつ」と称して、西陣界隈で雨後のタケノコの如く増殖している、町家型3階建住宅群が紹介され、景観条令成立後も本来の京町家が姿を消し、無味乾燥の新工法住宅が新条例を背景に大量に建てられている様を指摘され、法制度の限界と、京都での我々の活動の虚しさを感じた次第である。
 

菓子屋横丁

芝居小屋 鶴川座
 翌日早朝に起床し、市内を一周してみた。「散策マップ」の主要箇所を約1時間でひと巡りする事が出来、とてもヒューマンなスケールの町であると実感した。更に、昨日夕刻に川越駅から北の歴史ゾーンに向け、一直線に延びる中心商店街「クレアモール」から、銀座通りを改称した大正浪漫夢通りを歩いてみて、あふれる程の若者達が通りを行き交い、観光だけではない現代の商業都市として、瑞々しく生き続けている姿にも、動かされる物があった。地方都市のシャッター商店街とは違う、中核都市の優れた新旧のバランスが絶妙に保たれており、人々の表情にもそのゆとりが読み取れるようであった。散策の後「川越蔵の会」のメンバーであり、市の都市計画課にも勤めている荒牧澄多氏から、「蔵の会」が再生した弁天横丁の長屋ギャラリーや、会長の経営する蔵づくりの店、住居、工房等を見せて貰った。午後には、会員達が次の再生目標にしている大正時代の芝居小屋「鶴川座」の調査現場を見学し、続いて近世に京都から伝わったのではないかと言われる真壁造、板葺屋根の町家を訪問した。蔵造りの重厚な建物の横に、京風の町家が数軒存続しているのが興味深かった。「川越蔵の会」の会員には、商店主から借家人、建築職人、設計者、役所の勤め人等、幅広い人脈がかかわり、有機的に活動している。次の全国町家再生交流会に於いては、私達京町家ネットのメンバーと膝を交えて、話し合うことができれば嬉しい限りである。  

弁天横丁 ギャラリー”なんとうり”

「川越 蔵の会」事務局の入いる長屋
(作事組広報委員会 木下龍一)

工事実績: 212件
相談件数: 572件
('99年〜'14年11月30日現在累計)