◎9月の報告
◎10月の予定
9月30日(日)、K邸改修工事の現場見学会を開催しました。あいにくの暴風雨の中、作事組と再生研究会のメンバーが参加しました。 K邸は間口2間半の奥行7間半、1列3室型総2階建で、5間の奥行のある渡り廊下と前栽の奥には1列3室型のハナレが建ち、さらにその後ろに北庭を構えるという、大きな町家です。棟札から昭和14年に白生地問屋として建てられたことがわかり、戦中という時代背景からも、建主は経済的・社会的に有力者であったのではないかと推測されます。近代様式の町家の特徴を随所に備えた建材や内装も興味深い姿でした。渡り廊下から眺める前栽には巨大なさざれ石が据えられ、お施主様は縁側から眺めるこの景色が気に入って購入されたとか。今回の改修工事では主に構造改修をおこない、本格的な設備でパンを焼きたいという夢を包んだ家族の住まいとして再生されます。 (事務局 常吉裕子)
[茶道お稽古]
(事務局 常吉裕子)
[伝統木造建築の構造設計勉強会と見学会]
勉強会では、時刻暦応答解析で伝統軸組構法を解く設計法をお話し頂きました。また、改修の実例のお話もあり、より精密正確な解析が結果的に設計全般に自由度を担保すると、構造技術者としての矜持を伝えられた気がします。文化財に準じる建築物として基準法の枠をはずされた行政判断は、京都での伝統構法再生の取り組みにも心強い先例になります。 見学会では、アフリカから来た800φ10mのケヤキの柱、北米から来たヒバの梁や造作材など、その大きさや材質に圧倒されました。槍鉋での仕上げのヴォリュームも町家再生とは桁違いです。鉄と木の複雑なハイブリッドの架構、シンプルな軒のディティールは、まさに21世紀の再建といった感じです。奈良の現場ならでは、鹿がのんびり場内に入り込んでいました。見学後、参加者は瓦を寄進して、その裏側に思いを書きました。慣れない漢文をつづっていると、立石先生から「字を間違えたら千年の恥やで」。京町家の解析も相談に乗るとそっと言ってくださり、秋の奈良を楽しむべく散会となりました。 (設計担当理事 末川協)
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