「看板建築」     堀 宏道  

大工   森脇 利夫
 このBeforeの写真は間違いではない、きっとこうだったに違いない。

 ところがこれを昭和という時代が外観だけを洋風?にリホームをした。ラス地にモルタル、構造材はない外面だけの壁。これは看板建築とかパラペットといって、その時代に流行した。敷地いっぱいに広げ、ミセの間は多少広くなったかもしれない。
 しかしこれが町家に良くない。室内への風通しが悪いばかりか、床下の換気も止る、建物は呼吸ができない。
モルタルが湿気を含み、湿度が高くなる。この湿度が悪さをする、これを私はしっどバットと言う。雨も風もあたらない下屋にはほこりが積もる。大屋根以上に立ち上がっている場合は雨じまいが悪い。そこまで風も止めれば、まさに風当たりが強く、建物にすれば冒険に近い。
 
これを作事組は施主と協働で元へ戻す。リホームではなくリガバリー、復元である。だからBefore Afterの写真は同じ。
外観というのはその家主だけのものではない、町の家である。


After
Before
平成25年12月
京都市上京区 
M邸
監修 京町家作事組
設計 冨家建築設計
施工 アラキ工務店