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平成20年5月
京都市中京区
約5分 |
監修 京町家作事組
設計 内田康博建築研究所
施工 アラキ工務店
瓦 光本瓦店 川戸 章裕 |
一文字軒瓦とは、軒瓦の下端 (したば) が一直線なもので、120枚版〜49枚版
(坪当り) まで、すべてのサイズに幅広く使用されるのもこの軒で、京都市内では現在一般的な万十軒瓦よりも過去
(戦前) に建った京町家には、最も大きなシェアを占めていたかもしれない。今も昔も高級品に位置することは同じであるが、市内をはずれて周辺部へ行くと、石持万十軒であったり、唐草軒瓦や手磨きの
万十軒であったりで、一文字軒の量は がたっと減る。やっぱり市内中心部のように町家が横ならびに連なっている姿によく似合うこともあって、定番となって
いったものと思われる。前の垂の深さを最も低い水の流れるところで一寸五分〜三寸以上まで五分刻みにあって、その深さでステイタスを表現した。それも町家
が表から見てあまり比べるものもなく、かといって特に目立ったこともできなかったからなのかもしれない。シンプルでシャープなのが美しい。直線と平面を形
造るぐらい簡単なことのようで、けっこう難しい。焼き物の特性のネジレやユガミのある割れ物を、タガネで切り合わせ、摺り石で磨いて面も取り、癖を殺して
まっすぐに見せる。これを合端と書いてアイバと言う。これもせっかくの手間仕事なので、現場で見てもらわないと値打ちがない。それでも今は、場所も取るし
埃もすると言うことで、工場の作業になっている。取り付けるときは、下端に糸をピンと張り、出具合と高さを見てあっちこっちとにらみながら、かましものを
差し込み、しっかり固定する。やっぱりこれは上品な町家の仕上げの基本形なので、心を込めて施工したい。 |