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改修手順の作法・第11回

改修作法〔その7〕技術編2
梶山秀一郎(作事組理事長)

8)町家に相応しい素材と工法を採用する

『町家再生の創意と工夫』(学芸出版社刊、2800円+税)
  町家に相応しいとは町家の特性に沿った、ないしは特性を増進させるということである。町家の特性とは後先を考える、適材適所、柔軟で粘りのある構造、保全性、保守容易性などで、今までに述べてきたことである。

町家の生涯から来世までを見通す
  後先を考えるとは手入れして、住みながら守り続け、用が変わり、用が終わるまでの間を見通すことである。具体例を挙げると、構造では土台、根絡み、筋違などは構造上も問題だが、沈んだり歪んだときの揚げ前、歪み突きを困難にしてしまう。また仕口や継手を省略して金物で補強すれば、数年経って、木が痩せれば緊結の用を為さなくなるうえに、鉄部が結露して木材の接触部を腐朽させてしまう。仕様や設備では前回7)湿気を避けるに挙げたこと。素材では安易な選択であり、例えば土壁の場合では水ごねではなく糊ごねを使うことで、下地である土壁の強さと仕上げの強さが異なりめくれなどの故障を招くうえ、糊の寿命(10年前後)が仕上げの寿命になってしまう。また合成樹脂の使用は再利用を困難にすることもあるが、合成樹脂のゴミが明治まで続いたゴミの再資源(肥料や塩類)化を断念させ、かつ全消却に向かわせ、現在ゴミ行政が破綻寸前である歴史を顧みる必要がある。工法では床に縁甲板を張り、床下への進入や配線、配管のメンテを困難にすることで、設備の寿命(20年前後)を床の寿命にしてしまう。また床材、壁材及び天井材を接着剤で貼ることは糊の切れが床鳴り、めくれなどの故障の始まりということと、併せて材料の再利用を困難にする。

町家の適材適所に学ぶ
  適材適所とは素材の特性を知り、適切に使うということである。構造材では通り柱は強く粘りがあり水にも強い檜を、側柱は上から真っ直ぐかかる軸力に耐えられればよいので杉を、桁、梁は常に曲げる力がかかるので粘り強い松を、大引やモヤ、垂木は床や屋根の荷重だけ受けられればよいので、末、元寸法の差が少なく狂いにくい杉を使うということである。造作材では、敷居は強度、摩滅、滑りを考慮して松を、鴨居や天井廻り縁は木目の美しさを優先して狂いの少ない杉を──狂いやすい栂を使うことがあるが、これは木目の美しさを尊重した結果で、慎重に柾目取りをして使う──ことであり、また素木を使う座敷や玄関は節がなく木目の通った良材を使うが、ベンガラで化粧するその他の箇所はそれらに頓着せず、狂いの少ない木取りだけを考慮するということである。建具は可動部品であり、敷居の摩滅を小さくするために、軽くて狂いの少ない杉を使うといったことであり、他の部材や部品も同様である。

連載を終えます
  「改修手順と作法」と題して、今回を含めて11回連載してきました。第4回までは順調に手順を踏んで設計まで進みました。5回からは改修工事にかかるところを理解の便宜上、作事組の改修作法を説明しておくということで、7回目の今回で一通りの説明を終えました。
  実は03年11月に始まったこの企画は既刊『町家再生の技と知恵』に続く町家改修マニュアル第2弾の編集を前提に、その主題と位置づけていて、まとまったところで本にしようと考えていました。
  ところが前々からの夢であった、全国町家サミットが「全国町家再生交流会」として実現することになり、町家などの伝統構法を復権させる道筋が見えてきました。そのなかで『技と知恵』をより現実にすり合わせたテキストが必要だと感じました。
  周囲に無茶だといわれながら、昨年の8月に始まった第2弾の編集は、スロー、クイックを繰り返しながらもお施主さんや作事組会員の全面協力を得て、『町家再生の創意と工夫』という書名で、予定通り出版されました。その全力疾走の過程でこの2ヶ月に1回の連載を追い越し、これまでの内容も他のテーマとの関係から再編され、内容も書き改められてしまい、連載を続ける意味がなくなってしまいました。
  「作事組は今」というべきこの本は専門書として書かれていますが、住み手をはじめとして、できるだけ広範な方々に読んでいただきたいと思っています。「京町家通信」編集委員会に諮ったうえで、次回からは『創意と工夫』のタテ・ヨコ・ナナメ読みとでも題して連載しようと考えています。ご期待ください。

2005.7.1

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