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京町家作事組

ホブソンズカフェ 四条富小路店


施工・(有)大下工務店/設計・内田康博建築研究所


改修後:内観
アイスクリーム屋さんとなった京町家の改修についてご紹介します。

◎建物の概要
 間口約7m、奥行き約15mの主屋は1列4室型の間取りを基本とし、ハシリニワが3m近くもある総2階の大きな建物です。奥にトイレ棟を突き出し、前栽を挟んで間口3間、奥行2間の蔵があります。築年は明治10年と伝わりますが、屋根裏には大正15年の棟札が残り、2階の屋根を高くする大改修を行った時期を示すと思われます。2階の床が3段階に残り、それ以外にも何度かの改修が行われた事が伺われます。元々は漬物屋さんとのことですが、その後洋裁教室などに使われ、平成10年からは1階の表側は喫茶店としてモダンに改修され、奥と2階は住まいとして使われていました。

◎改修の経緯
 この建物のオーナーである家永氏は電気工事関係の会社を経営しておられますが、借家人であった喫茶店主との旧知の縁でこの町家を所有することとなりました。数年前に喫茶店が閉店し空き家となり、一時は貸しビルを建築することを検討しましたが取り壊し間際に、町家の調査に来られた方が町家の価値を話していたことが思い起こされ、急遽踏みとどまって京町家再生研究会に連絡されました。早速、再生研の担当者が訪問し、価値のある町家であること、改修は十分可能で活用方法も様々に考えられることなどをお話しし、残されることになりました。その後、京町家情報センターに登録され、しばらく借り手を探し、何件かご相談がありましたが悩んだ末、ご自身でアイスクリーム店を経営することとされました。ホブソンズは関東を中心に全国展開するアイスクリームチェーンで、町家を本来の姿を活かして改修し、町家らしさを阻害しないような店舗としたいという家永氏の希望が受け入れられるということで提携することとされました。

◎改修の内容

改修前:外観

改修後:外観
 家永氏は、できるかぎり元の町家の姿を活かし、伝統の素材で伝統の構法により改修することをご希望され、作事組の改修方針と合致しています。瓦を葺き替えて雨を防ぎ、柱梁の歪みを直して傷みを補修し、構造体を見せて通風を確保し湿気を逃がすことを基本とします。明治10年にはツシ2階だったと思われますが、ある時期に総2階とするため柱が継がれていました。補強として正面両端、裏手座敷の両端及び大黒柱と向かい合う側柱の5本に通しの添え柱を追加しました。その他、ほとんどの柱を揚げ前し、根継ぎをしています。大黒柱は屋根の高さで20センチ傾いていましたが、ほぼ垂直に戻すことが出来ました。調理スペースをハシリニワに確保してカウンターを設け、その座敷側にミセの間から奥まで土間を通すため、ゲンカンとダイドコは幅1間の畳の間としています。トイレ棟は使い勝手から少し移動して前栽を広げています。2階のオモテの間は天井が高く、展示スペースとして使われていたようですが、現在は経営する会社のオフィスとしています。2階ナカノマ、次の間、座敷は元々の町家の姿のままです。奥の蔵は隅の柱の足元が完全に腐朽していましたが、根継ぎをし、壁を塗り直し、元の美しさを取り戻しています。

◎お店について
 メニューはアイスクリームとクレープが中心で、コーヒーもあります。アイスクリームはフルーツやクッキーとブレンドできるのが特徴で、クレープはチーズやハムなど食事メニューもあり、昼食にも利用できます。7月8日に開店したばかりでまだまだ試運転中ですが、来店された方には落ち着くと喜ばれているようです。是非一度、覗いてみてください。

内田康博(作事組理事)

2014.9.1