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京町家作事組

世代をつなぐ町家─伏見区・有限会社ダイアテックプロダクツ新事務所


設計・末川協建築設計事務所/施工・アラキ工務店



陶磁器製便器
 弊社会長(荒木正亘作事組理事)より、末川協氏(作事組理事)の実施図面と概算見積を渡され工事担当を任されたのが今年3月。図面と見積書から一抹の不安を感じてはいたが、初めて現場に訪れた時にその不安は解消された。
 場所は伏見。近くには月桂冠大倉記念館を始め寺田屋など、常に多くの観光客で賑わう「伏見南浜界わい景観整備地区」の一角。緩やかな石段を下り、門を潜ると現れた間口5間/奥行8間の町家。空家になって数年が経過。外部はくたびれ、内部は荒れ、庭は原型を留めていないジャングル状態。
 しかし、その佇まいは建てられた当時のままで、離れの便所には「陶磁器製便器」が鎮座するほど。場当たり的な改修工事痕がなく、末川先生の図面に従ってゆけば問題ないと確信。
 今年5月「佇まいの再生と事務所機能の両立」をプロジェクトの軸に据え着工。着工直後の5月16日に棟札を発見。日付をみると「大正14年5月16日」。……関係者一同、なにかの縁を感じながら工事再開。

土壁補修

排水工事風景

竣工写真
 構造改修では最大15cmの不陸の調整、柱の根継、カヅラ石の新設など末川先生の指導のもとに施工。意匠再生では、多少の手間暇は惜しまずに極力古材を再利用。また、事務所機能としての用を満たすために全ての設備機器を一新。建物は築85年が経過するが、電気設備・ガス設備・通信設備・水道設備・排水設備・空調換気設備などはピカピカの平成22年製。膨大な配管・配線も隠蔽配管を心がけ意匠に配慮。
 工事途中に「棟梁塾」の塾生さんたちにも荒壁補修や建具洗い、古色塗装などを手伝って頂いた。もちろん、工事中は色々なハプニングは付き物ですが、大きな事故もなく竣工を迎えられた事に感謝します。  今回のプロジェクトの施主は「オーナー」ではなく「借主」。15年の定期借地権を結ばれ、その間に工事費を償却される予定。建物のウンチクや施工のポイントなどはさておき、本プロジェクトの最大のポイントはココだと考える。


工事担当:小野敏明(アラキ工務店)

2010.11.1