世代をつなぐ町家─伏見区・有限会社ダイアテックプロダクツ新事務所設計・末川協建築設計事務所/施工・アラキ工務店
場所は伏見。近くには月桂冠大倉記念館を始め寺田屋など、常に多くの観光客で賑わう「伏見南浜界わい景観整備地区」の一角。緩やかな石段を下り、門を潜ると現れた間口5間/奥行8間の町家。空家になって数年が経過。外部はくたびれ、内部は荒れ、庭は原型を留めていないジャングル状態。 しかし、その佇まいは建てられた当時のままで、離れの便所には「陶磁器製便器」が鎮座するほど。場当たり的な改修工事痕がなく、末川先生の図面に従ってゆけば問題ないと確信。 今年5月「佇まいの再生と事務所機能の両立」をプロジェクトの軸に据え着工。着工直後の5月16日に棟札を発見。日付をみると「大正14年5月16日」。……関係者一同、なにかの縁を感じながら工事再開。
工事途中に「棟梁塾」の塾生さんたちにも荒壁補修や建具洗い、古色塗装などを手伝って頂いた。もちろん、工事中は色々なハプニングは付き物ですが、大きな事故もなく竣工を迎えられた事に感謝します。 今回のプロジェクトの施主は「オーナー」ではなく「借主」。15年の定期借地権を結ばれ、その間に工事費を償却される予定。建物のウンチクや施工のポイントなどはさておき、本プロジェクトの最大のポイントはココだと考える。 工事担当:小野敏明(アラキ工務店)
2010.11.1 |