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京町家作事組

路地奥から望む両本願寺 ─下京区・Wd邸2


設計・末川協建築設計事務所/施工・アラキ工務店

◎施主のコメント
 

工事前外観

工事後外観
作事組事務局の北側、路地奥の隣家の傷みが進み、この数年、居宅のハナレへもたれ掛る状態でした。持ち主にはなんとも出来ず、路地奥でここまで傷んだ町家では路地の人も不動産屋さんも引受けず、解体するつもりで買い取ることになりました。しかし機械の入れない路地奥では、解体にもまたお金がかかる。作事組の皆さんに相談すると、これでもまだ直せるということで改修に踏み切りました。当面は人に貸すつもりです。
 工事では若手の新進気鋭の大工さんや左官さんに頑張ってもらい、ずいぶんと喜んでいます。吊床や虫籠窓はもと通りになって、あたらしい下地窓や押入、階段の手摺もずいぶん工夫してもらいました。二階の床の補強や弁柄のふき取りでは、家主として注文をつけましたが、10年前の工事(現事務局)に勝るとも劣らん工事だったと思います。
 十分に直してあると思いますので、あたらしい住み手さんが大事に使ってくれるとありがたいと願っています。
大岡 茂(作事組事務局家主)


◎改修のポイント
 賃借を前提とし、使われ方にできるだけ巾を持てるよう、間口二間、奥行き三間の一列二室、総二階の各室をそれぞれ独立して使えるプランを狙った。共用となる1階オモテ3帖に小さいキッチンを置き、間中の巾のハシリニワに小さい階段を設けた。27センチの沈下の揚げ前、1,2階とも完全に落ちていた南側壁を木舞と土壁で復旧すること、屋根の瓦葺の復旧の含めるとほかに贅沢は望めない。最小限で3点セパレートの水廻りを納め、町家のもとの姿に戻すことに努めた。この町家に贅沢なものは、もともとこの町家にあったもの、浴室や前栽から手の届きそうな東本願寺の石垣と2階のオモテから路地越しに望む西本願寺の大屋根だと考えた。住まい手が、日々の暮らしの中にそんな祈りや歴史があることを喜んでいただけるならと願う。

改修後2階オク

改修後小さい階段

工事中小さな流し

工事前落ちている側壁と不陸の様子

工事中出桁の架け替え

 アラキ工務店の若手チームが工事を担当、構造改修をたんたんと進め、揚げ前と間口方向のイガミ突きに加え、梁間方向の捩れも戻していった。路地奥の小さな町家だから出来ることもある。京町家棟梁塾二期生が南側壁の木舞を実習で編んだ。小さな前栽いっぱいにコンパネで舟が作られ、落ちていた壁土が練り直され、もとの壁に付けられた。新しい下地窓は本物の「下地」窓で、化粧のすす竹と藤つるは棟梁が自ら編んでくれた。工事中の一服用の仮設の濡れ縁は大屋さんに気に入ってもらい、工事完了後も残された。これも住まい手の新しい庭つくりに加えていただければと願う。
末川 協(作事組理事)

2010.7.1