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京町家作事組

町家に復活した3つの庭─中京区・T邸


設計・アトリエRYO/施工・山内工務店

トオリニワ(キッチン)
トオリニワ(キッチン)
 
  今回の町家は、御所南小学区にある1列4室型の再生例である。昭和7年上棟の棟札と市街地建築物法への届出図面が残されていて、当初の姿より表の出格子が腰石貼の鋼格子に変わり、走りにわの床を貼り火袋が閉ざされた事がわかったほか、大きな構造的な変更はなされていなかった。戦後、施主の祖父母が町家を買い受け、京染加工元卸問屋をしていたと聞く。父親と施主自身は共々、サラリーマンとしてそこを離れて住んだため、一時町家は無住になっていたが、30代の奥様と男女2人の小学生の子供達と共に、継承するこの町家に住んでみようと決意し、京都市景観・まちづくりセンターの紹介で作事組に出会うこととなった。職住一致の祖父母の商家に専用住宅として再住するには、主人の幼少期の良き思い出と、関東育ちの夫人の勇気ある決断が大きな支えになったと想像する。心から素直に町家に伝わる文化と作法の伝統を受け入れながら、自分達の理想の住まいを創ろうと努められ、改修計画を進める事が出来た事をうれしく思っている。

 改修のポイントとしては、まず最初に井戸のある玄関庭と北側の光庭、さらに奥の前栽の3ヶ所の庭を復元再生し、有機的に連繋する事により、リビングと奥の間10帖に緑の光と風を招じ入れる事を企てている。2番目にとおりにわの火袋を復元して、明るい木製キッチンを造り付け、元だいどころの床、天井を改装してリビングスペースとし、日常生活の中心場所とした。特に2階への階段を押入から取り出し、緩勾配にして収納飾棚と一体化し、空間の拡がりを演出した。3番目は渡廊下を数寄屋風に改装して水廻り機能を新設。4番目に2階の座敷10帖を洋室化し寝室として、日当たりの良い物干、縁側をベランダ風に改造した。5番目には、みせ2階を母親用の客室と子供室に2分化し、だいどころ2階のもうひとつの子供室を連繋して、玄関上部に天井吹抜けの共用アトリエを設ける工夫をした。最後に、今回の全ての改装部分は、復元可能な仮設的工法を採用している事を付け加えておきたい。
木下龍一(作事組理事)
 
復活させた井戸
復活させた井戸
光庭
光庭
リビング
リビング
共用アトリエ
共用アトリエ
2009.5.1