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京町家作事組

小さな町家のファサード復元と構造改修─東山区・Si邸借家


設計・内田康博建築研究所/施工・山内工務店

◎改修のポイント
 岡崎道を三条通からすこし南に位置する町家の改修です。平安神宮・南禅寺から知恩院に至る人力車の通る落ち着いた小道に面しています。長い間借家としてお貸しされ、借家人によって大きく改修されていた町家を、出来る限りもとの姿にもどし、長く使えるように改修したいとのご依頼でした。


根継ぎの状況

 ファサードは道路際いっぱいまで拡張されてモルタル塗りの壁が新設され、内装はすべて合板と石膏ボードで覆われていました。ボードの裏には湿気がたまり、当然シロアリによる被害が心配されますが、案の定大幅な蟻害がみられ、ヒトミ梁と框、向かって右の通り柱は入れ替えが必要でした。また、足下が腐食した柱は根継ぎを行いますが、外周の柱はほぼすべて足下が腐食し、結果ほぼすべての柱の根継ぎか入替を行いました。同時に揚げ前を行っていますが、左右隣家がほとんど隙間なく接しているため、歪み突きは見合わせました。
 前栽を占領していたユニットバスと便所は傷みが激しく、すべてやり直すこととしましたが、屋根の雨仕舞から主屋側にも被害をもたらし、この部分は柱だけでなく、梁も入れ替えました。トイレは主屋に組み込み、風呂は元トイレの場所に据えることで小さな前栽を復元し、通風と採光を確保しています。
 ファサードはほぼすべて作り直し、1階は細目の平格子、2階は手すり付腰掛け窓と虫籠窓を組み合わせ、伝統的な意匠を再現しました。


復元された火袋

 1階の居室はキッチンの他、ミセの間3畳、オクの間4畳半の2室でしたが、6畳1室+縁側とし、トイレの入口を居室から離しています。天井は隠されていた大和天井をあらわし、その他は蒲、網代、杉板を使い分けています。
 キッチンの天井裏にかくされていた火袋はもとにもどし、吹き抜けと高窓を再現し、トップライトを新設して明るくて風通しのよい、気持ちの良い空間となりました。
 2階はオモテの間と一体となっていた木置きを襖で独立させて虫籠窓付の物置とし、4畳半のオクの間の押入を撤去して6畳としました。2室とも低い天井は撤去し、小屋組をあらわし、空間を広くみせています。
 大屋根もすべて葺き替え、心残りなく改修工事を終えることができました。
 活用方法は当初から再生研、友の会へも相談されていましたが、様々な検討の結果、ゆくゆくは娘さん一家がお住まいになることも考え、それまでしばらくは賃貸とされる方針に落ち着き、近々、情報センターと相談されることとなっています。



ヒトミ梁と柱の蟻害

ヒトミ梁・柱を入替

改修前ファサード

改修後ファサード

内田康博(作事組理事)

2008.9.1