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京町家作事組

創作の場としての町家改修 ──中京・Og邸


設計・ノム建築設計室/施工・アラキ工務店

○改修のポイント  
 祇園祭に山を出す骨屋町の浄妙山保存会の会長であった松村さんは、祇園祭が終わると粽を携え、かつての寄町の町会長を訪ね、祭りを無事に納めた報告をすることを自らに課した習わしとしていた。下松屋町の町会長であったOgさんを訪ねた際、Ogさんがご自宅の町家の改修意向を示され、松村さんが「京町家友の会」の会長であったことから作事組に話があり、作事組が改修相談を受けさせていただくことになった。
 町家は三代に亘り染色作家であるOg家の当主の祖父が昭和3年に建てた。ところが工房としてではなく、茶道の教授をしていた祖母がお茶事を催すことことを最優先して建てたとのことであり、普通の町家とは異なる特徴をもつ。ミセは玄関として天井を張って床がしつらえてあり、オクの間は畳を切り縮めてまで、水屋のための廊下が設けられ、2階の座敷にも炉が切られている。また出格子の子格子が削り出しの丸棒であったり、階段のササラの端部に刳り型を施すなどの意匠上の特徴もある。


  施主の構想は京染めの着物や帯を、直接にお客さんから受注して製作する仕事の割合を増やすべく、別の場所にあって不便をかこつ工房を整理して、裏に所有し物置になっている借家2軒を工房と住まいに建て替え、町家をお客さんとゆっくりお茶を飲みながら話し合ったり、試着する接客の場にしようというものだった。したがって改修設計は町家本来の形にするということで、作事組の改修方針にぴったり重なるものであった。いやむしろ自然に退色した木部のベンガラやキズは暮らしが刻んだ歴史として残して欲しいという希望など、作事組を上回るものであった。間取りの変更もほとんどなく、オクの間の縁側が庭側に張り出され物置になっていて、前栽が水廻りの渡りからしか望めなかったのを、元の縁側に戻し、不要になった浴室を洗面・洗濯室に変えたこと、ハシリのオクに納戸を設けたことだけであった。構造的には揚げ前と根継ぎ及び床の組み直し、それと隣家2軒から玉突き状態で押されているため諦めていて、工事中に挑戦することになった歪み突きである。設備は排水管の土管の敷設替え、接客や着物の柄を判ずるにふさわしい照明計画が主なものである。


 呉服の受注相談をするためにこれ以上の場はないが、そこに止まらず小倉さんは町家の光や風、すなわち町家の空気を創作の源泉のひとつにされている。水を得た町家が最大限に活躍してくれることと思う。


前庭(改修中)

前庭(改修後)

トオリニワ(改修前)

トオリニワ(改修後)
2005.11.1
梶山秀一郎(作事組理事長)