檜垣を生かし扉に利用 ──中京・Ss邸設計・クカニア/施工・アラキ工務店 概要 間口3間弱、奥行き7間半、奥に湯のし作業に使われていた離れを有する、築80年、一列3室総2階建ての町家である。
改修のポイント 流しの水が流れていない、トイレの水が良く出ないなどの問題があり、水廻りの改修、母屋の整備、離れの取り扱いが改修のポイントとなった。離れは、宿泊の出来る場として整備することとなった。 収納 多くの押入れ、物入れがあったが、有効な利用がされておらず、全て内部を板張りとし現在の収納に合わせた。また、1階の茶の間には、階段下の収納を利用して、テレビ台とPCスペースを設けた。 水廻り 今までは、濡縁から便所や浴室に行っていたが、寒いのでインドアにし、更に、便所、洗面所にはトップライトを設け明るい空間とした。また、この部分から排気も行うこととした。小便器は、最小限の寸法の空間となったが、使勝手は良い。キッチンは、吊り戸棚を止め一列のスッキリした明るい空間とした。また、照明取付け用の松板を渡しアクセントとした。
施工 今回は、仮設のキッチンとトイレを設け、住みながらの改修に取り組んだ。最初は離れを先に施工してそちらに引っ越してもらってから母屋を施工する予定であったが、ちょうど真冬の時期で、寒い離れに引越してもらわなくても済むように荒木社長が配慮されたので、母屋の中の移動だけで済むようになった。その結果、工程上は延びる事となったが、施主は喜んでおられた。
エピソード 住まいながら改修した結果、施主は工事の工程をつぶさに見る事となり、徐々にきれいになっていく様を興味深く感じていただいた。この現場をおかりして、「魁棟梁塾」の講義が開かれた際も、洗いの話、板金の話を塾生と一緒に興味深く聞いておられた。また、この際、離れの屋根は垂木のピッチが異なり、更に室内表わしにしたので、瓦棒葺の桟を垂木のピッチに合わせた結果鉄板のサイズを全て異なる寸法で折り曲げる事になったと知り、施主共々苦労に感謝した。 2005.5.1
野間文夫(クカニア、作事組理事) |