50年前に移築再建された京町家の部分改修 …上京・Mt邸 施工・山内工務店 ■改修のポイント 二条城西北の堀端近くにある、母屋（中2階、約21.5坪）と比較的新しい離れ（12.6坪）の建物の改修について、Mtさんの娘さんがインターネットで京町家作事組と出会われ、連絡をしてこられました。 Mtさん夫妻は離れの2階にずっと住んでおられ、平成9年に母屋に住んでおられた母親が亡くなられ、母屋に移られましたが、雨漏りがしたり、各所の建具やふすまが動きにくいため、部分改修を決意されたとのことです。 まず母屋、離れとも、大屋根、下屋根、玄関庇の垂木の一部や野地板を取替え、瓦を全てイブシ瓦に葺替えました。母屋1階の表の間、中の間、奥の間は、一部を揚前し、床板や大引、根太、敷居を取り替えて不陸をなくし、建具調整をしました。
内部の壁面については予算の関係上、漆喰および聚楽塗は補修にとどめました。母屋の中2階表の間、奥の間2間は、床補修のみを行い、建具は調整し、天井は既存ままとしました。また、通り庭には、昔のままの火袋があり、作り付けの流し台がありましたが、これはステンレス流し台、ガス台調理に取り替えを行いました。 火袋の壁面や、WC洗面所、風呂場、水廻りは、白蟻による腐蝕がひどく全面的にやり替えています。その他の部分については、WCを洋式便器に、洗面所を洗面ユニットに、風呂場浴槽を人工大理石、壁面タイル貼とし、給湯器は追い炊き付きに取替えました。
離れは1階ガレージと2階和室の2部屋となっていますが、平成9年以降住んでおられないため、1、2階の梁、通り柱、根太、敷居、鴨居が、白蟻の害がひどく、すべてを取替え、補強をしました。外部は玄関のみ格子戸を新調し、立格子は既存のまま古色で塗替えています。中2階の虫籠は漆喰壁を塗替え、庇屋根の木熨斗、前包み、須す覆おいは取替え、古色塗りをしています。
Mtさん夫妻には非常に喜んでいただき、別居されてる息子さんが帰られてこの家を受け継がれる日が来るのを心待ちにしておられるようです。一時は解体してプレハブ住宅を考えられたそうですが、京町家作事組の手でここまで改修が出来て、この町家が残ったことは施工者としてとても喜ばしい限りです。 山内 茂（作事組理事）
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