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京町家作事組

空き町家をまちづくりの拠点に …中京・Oi邸


梶山秀一郎(作事組理事長)


 京町家情報センターに持ち込まれた相談は、空き家になっている町家を耐震補強と併せてすぐに改修したいというものであった。たまたま情報センターに寓居していた市民活動グループは活動のベースとなる借家を探していて、川やまちの環境改善に取り込むグループの性格上、町家でと考えていたが場所や費用上格好なものが見つからないでいた。情報センターが家主さんに申し入れをし、理解と協力を得ることができ借りることが決まった。グループが世界水フォーラム参加の都合上すぐに入居したいということであったため、家主さんはすぐに改修したいという希望の実現を1年間保留することになったが、町家の改修と活用が同時に実現することになった。

正面外観(改修前)
1階正面壁は元の位置より50cmほど前に出ており、建具がはまっていた。
  正面外観(改修前)
1階正面壁位置を元の位置に戻し、平格子、格子戸を新設した。

 町家は厨子2階の低さや構造部材の細さから明治中期の建設と見られ、一列3室型の標準的な間取りであるが、1間半もあるトオリニワと前土間(板張り)が特徴的である。
 お施主さんの親戚であった前所有者が昭和初めから米屋を営んでいたということから前土間や精米機用の吹き抜けは解るがトオリニワの広さの理由は不明である。
 改修は店や住まいの用途変更の歴史を映す増設部や改変部を撤去すると共に時代の流行による壁や天井に張られた合板類をはがし、できるだけ元の状態に戻すということであった。過去に側壁の一列に土台を入れるという大がかりな構造改修もされていて、間口方向の室側柱の立ちをとっても側柱は真っ直ぐにならないとか、成(高さ)不足で撓んでいる桁は屋根を解体する以外に手立てがなく辛抱せざるを得ないということもあった。

ハシリニワ・火袋(改修前)
以前の改修で、壁はベニヤが打ち付けてあったり、座敷から使う押入れ(左側)がハシリニワにせり出していた。
  ハシリニワ・火袋(改修後)
階段を新設し、壁は中塗り仕上げとした。火袋には補強のために、新たに梁を掛けた。

 タタキやベンガラなどの伝統工法は良さが解っていながらコスト面で作事組でも断念することが多いが、ここでは施工応援を公募したところ延べ60数名の参加があり、職方の親方による教授と指導のもとで実現することができた。
 今回新たに付け加えたのは広いトオリニワに設けた階段であるが、これは将来2階の厨子をギャラリーに使いたいという店子の意向と2階のオクを町内の寄り合いや地域のまちづくりの会合に使いたいという大家の意向を満たすためであり、甦った町家が町内から世界にまで広がるまちづくりのベースになることを願っている。